新居(一条工務店i-smile)でエコキュートを使って半年がたちました。エコキュートは湯を沸かして貯めておくという性質上、無駄な湯沸かしや放熱ロスがあるため、ガス給湯器と比べて電気料金・CO2排出量的によいのかが気になりました。
エコキュート,効率いいのはわかるんだけど,毎日4目盛り中4まで沸き上げるが,うちはそんなに使わず2-3目盛り残すので,使わなかった湯のロスがあって無駄に沸かしてる感が否めないんだよなあ.それでもガス使うよりは良いのか?現在貯湯量と目標をもう少し小刻みに表示・設定できるといいんだけど.
— デミオ (@dededemio) 2023年12月14日
例えば、以下の記事には光熱費の節約、CO2排出量の抑制が謳われていますが、本当でしょうか? powergrid.chuden.co.jp
この記事では、エコキュートの実際の利用を考慮した1日の電気料金・一次エネルギー消費量・CO2排出量を計算します。また、ガス給湯器でも計算し、性能を比較してみます。
この記事の目次です。
- エコキュートの必要湯量と加熱量
- エコキュートの電気料金・一次エネルギー消費量・CO2排出量
- ガス給湯器のガス料金・一次エネルギー消費量・CO2排出量
- エコキュートとガス給湯器の比較
- 湯を余分に沸かして使わなかった場合の比較
- まとめ
エコキュートの必要湯量と加熱量
エコキュートはタンクにお湯をあらかじめ沸かして貯めておきます。その場合、以下の無駄が発生します。
- 体積膨張
- 水がお湯になると3%体積膨張します*1。その分のお湯はタンク内に貯めておくことができずタンク外に排水されます。
- 無駄な湯沸かし
- 放熱ロス
- 前回の記事で試算しましたが、タンクに湯をためておくと65℃の場合1時間あたり0.4~0.5℃湯温が低下します。この分を含めて沸き上げないといけないので、余計な沸き上げが発生します。
こういった無駄を考慮して、冬期と中間期で1日に必要な湯量と加熱量を計算します。以下の条件とします。
- エコキュートは三菱電機のSRT-W375(370L)を想定
- 給水温度(水道から取水する水の温度)は冬期10℃、中間期17℃とする
- 必要蛇口水量(42℃水量)は435L*3
- 湯切れが起こると困るので、42℃80Lを余計に毎回沸き上げるが、これは使わず翌日に持ち越す
- 実際は残湯量が少なくなると勝手に沸き上げるが、ここではあらかじめ多めに沸き上げるものとする
- 夜間(朝5時)/昼間(13時)沸き上げのそれぞれで計算する。当日19時に必要水量を全部利用、翌日まで残り80Lを保温してまた沸き上げる
- 沸き上げ温度は65℃とする。19時の利用時や翌日はタンク温度が自然放熱で低下する
- 前回記事の方法でタンク温度を計算
- 体積膨張は水から沸き上げた場合に発生し、3%が無駄になる
このとき必要な貯湯タンクと使用湯量を以下のように計算します。
- 貯湯量[L] = (必要水量+80)[L] × ( (蛇口温度42[℃]-給水温度[℃])÷(沸き上げ温度=65[℃]-給水温度[℃]) )
- 実使用湯量[L] = 必要水量[L] ×( (蛇口温度42[℃]-給水温度[℃])÷(使用時タンク温度[℃]-給水温度[℃]) )
- 残湯量[L] = 貯湯量 - 実使用湯量
このとき、ヒートポンプで新規に給水温度から沸き上げる湯量と、前日からの残湯を沸き上げる量は以下になります。
- 新規沸き上げ湯量 = 実使用湯量[L] ÷ (1-3[%]/100)
- 追加沸き上げ湯量 = 残湯量[L]
そして、上記の湯量を沸かすための加熱量は以下で計算できます。
- 加熱量[kWh] = 湯量[L] × (沸き上げ温度[℃] - 給水温度 or 残湯温度[℃]) × 4.184[J/cal] ÷ 3600[s/h]
上記で必要湯量と加熱量を計算したところ、以下のようになりました。
季節 | 必要湯量[L] | 実使用湯量[L] | 残湯量[L] | 加熱熱量[kWh] |
---|---|---|---|---|
冬期(夜間) | 300 | 285 | 15.0 | 19.0 |
冬期(昼間) | 300 | 266 | 33.9 | 18.1 |
中間期(夜間) | 268 | 255 | 13.6 | 14.9 |
中間期(昼間) | 268 | 238 | 30.4 | 14.1 |
昼沸き上げのほうが使用までのロスが少なく使用湯量・加熱量も少なくなっています。
エコキュートの電気料金・一次エネルギー消費量・CO2排出量
1日のエコキュートの加熱量が求まったので、これをもとに以下の条件で電気料金などを計算していきます。
- COPは仕様表の中間期標準加熱能力/消費電力、冬期高温加熱能力/消費電力から計算し、昼夜同値とする
- ただし、湯温が高くなるとCOPは低下するので、追加沸き上げ湯量分はCOPを×0.66倍する
- 電気料金は、深夜沸き上げは東京電力スマートライフLの深夜料金から政府補助を抜いた金額(31.56[円/kWh]、2023/12現在*4 )、昼間沸き上げは太陽光売電単価(17[円/kWh]、2023年売電開始)を利用
- 一次エネルギー消費量・CO2排出量は夜間のみ計算し、東京電力の以下の係数を用いる
結果、エコキュートの1日の電気料金、一次エネルギー消費量、CO2排出量は以下になりました。
季節 | COP | 電気料金[円] | 一次エネルギー消費量[MJ] | CO2排出量[kg-CO2] |
---|---|---|---|---|
冬期(夜間) | 3.0 | 202 | 59.3 | 2.4 |
冬期(昼間) | 3.0 | 104 | 0.0 | 0.0 |
中間期(夜間) | 4.3 | 110 | 32.4 | 1.3 |
中間期(昼間) | 4.3 | 57 | 0.0 | 0.0 |
昼間は消費電力も少なく済むうえ売っても安価な太陽光を使うので料金的にもかなりメリットがあることがわかります。極力昼間に沸かしたほうがよさそうです。
ガス給湯器のガス料金・一次エネルギー消費量・CO2排出量
続いて、ガス給湯器も同様にガス料金、一次エネルギー消費量、CO2排出量を計算してみます。
ガス給湯器はエコキュートよりはシンプルに、給水温度→蛇口温度に要する熱量から必要ガス量を計算し、それに電気料金単価や換算係数をかけていきます。
- 必要ガス量[m3] = 必要蛇口水量[L] × (蛇口温度[℃] - 給水温度[℃]) ÷ (ガス熱量[kcal/m3]) ÷ 効率[%]
条件は、エコキュートと同様以下とします。
- 必要蛇口水量(42℃水量)は435L
- 給水温度(水道から取水する水の温度)は冬期10℃、中間期17℃とする
- 効率はエコジョーズの値93%とする*7
- ガス単価は東京ガス一般契約料金(20~80m3/月)の単価から政府補助を抜いた値(158.88[円/m3] *8 )とする
- 一次エネルギー消費量・CO2排出量は東京ガスの以下の値を用いる*9
- 一次エネルギー消費量換算係数:45[MJ/m3]
- CO2排出量換算係数:2.21[kg-CO2/m3]
- エコキュートとは逆に体積膨張によって温水の体積が上がる。42℃まで水温を上げた時の体積膨張分1.5%を必要水量から減らす。
上記の条件でガス給湯器の1日の給湯に必要なガス量およびガス料金、一次エネルギー消費量、CO2排出量を計算した結果、以下のようになりました。
季節 | 加熱熱量[kcal] | ガス使用量[m3] | ガス料金[円] | 一次エネルギー消費量[MJ] | CO2排出量[kg-CO2] |
---|---|---|---|---|---|
冬期 | 13,714 | 1.4 | 217.8 | 61.7 | 3.0 |
中間期 | 10,714 | 1.1 | 170.2 | 48.2 | 2.4 |
エコキュートとガス給湯器の比較
エコキュートとガス給湯器の加熱熱量は単位が異なります。単位を合わせて比較すると、以下のようになりました。
比較 | 冬期比較 | 加熱熱量[kcal] | 電気・ガス料金[円] | CO2排出量[kg-CO2] |
---|---|---|---|---|
冬期 | エコキュート(夜間) | 16,376 | 202 | 2.4 |
エコキュート(昼間) | 15,568 | 104 | 0.0 | |
ガス給湯器 | 13,714 | 218 | 3.0 | |
中間期 | エコキュート(夜間) | 12,790 | 110 | 1.3 |
エコキュート(昼間) | 12,171 | 57 | 0.0 | |
ガス給湯器 | 10,714 | 170 | 2.4 |
こう見ると、条件の厳しい冬期でもエコキュートのほうが7%電気料金が少なく、昼間の太陽光発電の電力を使えば半額以下で給湯できることがわかります。COPのよくなる中間期はより良いので、エコキュートのほうが光熱費・CO2排出量を削減できそう、というのは本当のようです。
湯を余分に沸かして使わなかった場合の比較
エコキュートは、ガス給湯器と比べて電気料金・CO2排出量的によい、という結果になりましたが、私がそもそも気にしていたのは冒頭のツイートのように、余分に沸かしてしまった場合です。
この場合、放熱ロスした分をCOPの低い温度帯で加熱するためより悪化するのではないかという懸念があります。 そこで、以下の条件でさらに比較してみます。
- 家庭内でも給湯需要は±100L程度の偏差が存在*10。そこで、必要蛇口水量(42℃水量)が315L~515L程度幅があるものとし、エコキュートでは80Lの余裕含む515Lを沸き上げるが315Lしか使わない日が続いた場合の1日の料金・CO2排出量を比較する。
- 冬期・夜間のみ比較
すると、結果は以下のように、ややエコキュートのほうが電気料金が高くなることになりました。
機器 | 42℃換算加熱湯量[L] | 加熱熱量[kcal] | 電気・ガス料金[円] | CO2排出量[kg-CO2] |
---|---|---|---|---|
エコキュート(夜間) | 515 | 12,685 | 161.4 | 1.9 |
ガス給湯器 | 315 | 9,931 | 157.7 | 2.2 |
つまり、毎回42℃で500L(65℃300L)近く沸き上げていても、2/3しか使わなかったら、冬の夜間沸き上げの場合は放熱ロスでガス給湯器とトントンになってしまう、ということになります。
まとめ
エコキュートを使って光熱費を下げるなら、特に冬はなるべく需要に応じた量だけ沸かしておくような調整が必要だとわかりました。
我が家では太陽光で昼間湯を沸かしていますが、さらに使用湯量モードで最小の200Lを設定して沸き上げるように変更しました。これで一日の終わりに湯が少なくなった旨のアラートが出るので、ちょうどいい湯量なのかと思います。
と思ったら,使用湯量モードというモードがあるらしい.蛇口・シャワーの湯量で沸き上げ量目安を設定できるとか.これ使ってみよう. pic.twitter.com/orVWFGBUmh
— デミオ (@dededemio) 2023年12月14日
おひさまエコキュートではないので、雨の日に夜間沸き上げに手動で切り替えないといけないのですが、その場合の放熱ロスでもこの程度の湯量でいいか、継続して様子見・調整していきます。
*1:三菱電機家庭用自然冷媒CO2ヒートポンプ給湯機 取扱説明書
*3:IBEC-Lモード(湯温43℃421L/日)を42℃換算
*4:スマートライフ(オール電化)|電気料金プラン|東京電力エナジーパートナー株式会社
*5:省エネ法での電力の1次エネルギー換算係数の算出根拠は? | 省エネQ&A | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
*6:2022年度のCO2排出係数について|東京電力エナジーパートナー株式会社
*9:都市ガスの種類・熱量・圧力・成分 | 東京ガスネットワーク
*10:建築研究所, 集合住宅の住まい方・設備保有状況に関する基礎調査 第7章 集合住宅向けの機器の評価実験および解析, 2014