東京電力から新電力(Looopでんき)に切り替えた場合の電気料金シミュレーション

一条工務店i-smileに入居して一年経過しました。ここまで東京電力オール電化向けプラン「スマートライフL」を使っていました。

dededemio.hatenablog.jp

東京電力は基本料金が高いです。オール電化なので最大需要電力は高いですからこれは仕方ありません。

しかし、太陽光パネル&蓄電池があるので買電量はそこまで多くありません。そのため、基本料金無料プランのある新電力への乗り換えを考えています。

一方で2022年冬のように市場スポット価格が急上昇した場合は、電気料金が逆に高くなってしまう可能性も考えられます。

そこで、基本料金無料の新電力に乗り換えた時にどの程度電気料金が減るか、市場価格が上がるリスクを踏まえても安価になるかをシミュレーションしてみました。

この記事の目次です。結果だけ見るには5の比較に飛んでください。

1. シミュレーション方法

どうやってシミュレーションするか、ですが、愚直に買電量から各電力会社の料金プランに沿って料金計算してみます。

まず、一条パワーモニターから2023/4〜2024/3の一年分の1時間毎の買電量データを収集します。

次に、同じ買電量が3年間続いたものとして、データを3年分に増やします。また、データを半分にして、30分毎の買電量データにします。

最後に、この電力量データから東京電力と新電力それぞれの電気料金プランで2021/4〜2024/3の3年間の電気料金を計算し、トータルで安くなるかを確認します。

新電力はLooopでんきのスマートタイムONEとします。

looop-denki.com

シミュレーションにはPythonを使います。Pythonスクリプトも参考までに記載します。(Python 3.9)

2. 買電量データの取得とデータのリサンプリング

一条工務店では、i-サポというアプリから太陽光発電量、消費電力量が閲覧でき、最大1年分のCSVデータを取得できます。しかしこのアプリでは買電量は取得できません。

play.google.com

もう一つ、一条パワーモニターというアプリから月・日・時別の電力量実績を見ることができます。ここには買電量データがあるのでこの値を使います。

play.google.com

CSVで取得するという機能はこのアプリにはないので、私は仕方なくスクショを撮影すると数値を読み取るPythonスクリプトを作成してデータ化しました。HEMS接続してれば、HEMS経由からとることができるのかなと思います。

データは月毎のCSVとして同じフォルダに置いたので、以下のスクリプトで3年分の30分毎データに拡張・リサンプリングします。

import os
import pandas as pd

# フォルダ内のすべてのCSVファイルを読み込み
df_list = []
for filename in os.listdir("./"):
    if filename.endswith('.csv'):
        df = pd.read_csv(os.path.join(actual_kWh_dir, filename), header=0, index_col=0, parse_dates=True, encoding="utf-8-sig")
        df_list.append(df)
df_combined = pd.concat(df_list) # すべてのデータフレームを結合
df_combined = df_combined["2023-04-01":"2024-03-31"] # 2023/4/1から2024/3/31までを抽出

# 3年分に拡張
df_ext = pd.concat([df_combined.assign(index=lambda x: df_combined.index + pd.offsets.DateOffset(years=i)) for i in range(-2, 1)], sort=False, ignore_index=True)
df_ext.index = df_ext["index"]
df_ext.drop(columns=["index"], inplace=True)
df_ext = df_ext.loc[~df_ext.index.duplicated(keep='first')] # うるう年の重複日を削除

# 時刻を30分ごとにリサンプリングし、不足している行を前値ホールドで補間
df_ext_half = df_ext.resample('30min').ffill() / 2
df_ext_half ["2024-03-31 23:30:00"] = df_ext_half [-1] # 末尾の30分を追加

注意点として、3年分に拡張するときに、2024はうるう年ですが2022, 2023はうるう年ではないので、余分な日付を消す必要があります。

これでdf_ext_halfとして30分毎の電力量データが取得できました。df_ext_half["買電"]とすれば買電量が取れます。

3. 東京電力の電気料金の計算

東京電力オール電化向けプラン スマートライフLの電気料金は、以下の4つの合計で計算されます。

  • 基本料金[円/kVA]×契約電力[kVA]
  • 昼間従量料金単価[円/kWh] × 昼間消費電力量[kWh]
  • 夜間従量料金単価[円/kWh] × 夜間消費電力量[kWh]
  • (燃料費調整額[円/kWh] + 再エネ賦課金[円/kWh])× 総消費電力量[kWh]

www.tepco.co.jp

基本料金・従量料金単価は、HPに記載されています。以下は2024/3/31までの料金表です。

基本料金単価は295.24[円/kVA]、昼間単価は35.96[円/kWh]、夜間単価は28.06[円/kWh]でした。24年度からさらに基本料金が上がり従量単価が下がる、つまり太陽光・蓄電池があり買電が少ない家庭には厳しい料金表になります。

また、過去の単価はもっと安かったです。

  • 2023/4/1~23/6まで昼25.87円/kWh、深夜18.37円/kWh
  • 2021/6~23/3は基本料金1kVAあたり286円、昼間25.8円、夜間17.78円*1

燃料費調整額は毎月変わるもので、過去の調整額がいくらだったかは以下のURLで見ることができます。*2

www.tepco.co.jp

再エネ賦課金の単価は、年度ごとに変化し、経産省で毎年決められるようです。直近の単価は以下のようになっています。

  • 2024/5~は3.49円/kWh
  • 2023/5~2024/4は1.4円/kWh
  • 2022/5~2023/4は3.45円/kWh
  • 2021/5~2022/4は2.98円/kWh

これらの情報を以下のようなCSVにして、買電量データと合わせて電気料金を計算します。

年月,  基本料金単価,  昼間従量単価,  夜間従量単価,  燃料費調整額,  再エネ賦課金
2021-04-01,  286.00,   25.80,   17.78,   -4.32,    2.98
2021-05-01,  286.00,   25.80,   17.78,   -3.64,    3.36
...
2024-03-01,  295.24,   35.96,   28.06,   -9.28,    1.40
2024-04-01,  311.75,   35.76,   27.86,   -9.21,    1.40
# 昼夜の時間設定
daytime_hours = list(range(6, 24)) + [0]
nighttime_hours = list(range(1, 6))

# 昼間と夜間の買電電力量を計算
actual_kWh = df_ext_half.copy()
actual_kWh['hour'] = actual_kWh.index.hour
actual_kWh['daytime_kWh'] = actual_kWh.loc[actual_kWh['hour'].isin(daytime_hours), '買電']
actual_kWh['nighttime_kWh'] = actual_kWh.loc[actual_kWh['hour'].isin(nighttime_hours), '買電']

# 年月列を追加して年月ごとに買電電力量を合計
actual_kWh['year_month'] = actual_kWh.index.to_period('M')
monthly_kWh = actual_kWh.groupby('year_month').sum()[['daytime_kWh', 'nighttime_kWh', '買電']]

# tepco_ratesのインデックスをPeriod型に変換
tepco_rates = pd.read_csv("tepco.csv", encoding="utf-8-sig", header=0, index_col=0, parse_dates=True)
tepco_rates.index = tepco_rates.index.to_period('M')
tepco_rates.drop(tepco_rates.index[-1], inplace=True)

# 月ごとの電気料金を計算
monthly_bill = pd.DataFrame(index=tepco_rates.index)
monthly_bill['基本料金'] = tepco_rates['基本料金単価'] * 10
monthly_bill['昼間従量料金'] = tepco_rates['昼間従量単価'] * monthly_kWh['daytime_kWh']
monthly_bill['夜間従量料金'] = tepco_rates['夜間従量単価'] * monthly_kWh['nighttime_kWh']
monthly_bill['燃料費調整額'] = (tepco_rates['燃料費調整額'] + tepco_rates['再エネ賦課金']) * monthly_kWh['買電']

# 合計電気料金を計算
monthly_bill['合計電気料金'] = monthly_bill.sum(axis=1)

計算した電気料金は以下のグラフのようになりました。燃料費調整額の高かった23年1月の電気料金が最も高い結果になっています。

東京電力スマートライフLの3年分の電気料金

4. Looopでんきの電気料金の計算

Looopでんきの家庭用プラン スマートタイムONEの料金は以下の合計で計算されます。*3

  • 基本料金0円
  • 30分毎の電力使用量[kWh] ×{30分毎のエリアプライス[円/kWh] ÷(1-エリア損失率)× 1.1(消費税等相当額)}
  • (託送費[円/kWh] + サービス料[円/kWh] + 再エネ賦課金[円/kWh] + 容量拠出金相当額[円/kWh])× 総消費電力量[kWh]

Looopでんき スマートタイムONEの料金構成

基本料金0円、というのが特徴です。

料金の主は30分毎の使用量×東京のエリアプライスで計算されます。東京エリアの損失率は6.9%です。過去のエリアプライスがいくらだったかは、JEPXのHPから閲覧・ダウンロードできます。

www.jepx.jp

計算のため、2021年度~2023年度の価格をそれぞれspot_summary_202x.csvというファイル名でダウンロードしておきます。

託送費は年度毎に代わるようで、23/3までは9.61円、24/3までは9.78円、24/4からは9.37円のようです。サービス料は5.5円/kWhで固定です。*4

再エネ賦課金は東京電力同様かかってきます。

また、容量拠出金相当額2.2円/kWhというのが24/4から追加されました。容量拠出金というのは、日本全体で必要な供給力(kW)の確保のため、小売事業者などが発電事業者に払う仕組みだそうです*5

東京電力では、この容量拠出金は23/7の値上げからの電気料金にすでに織り込まれているようです。片方だけに入れて比較するのはフェアではないので、Looopでんきでも23/7から容量拠出金相当額がかかっていたものとします。

上記から、買電量データと合わせて電気料金を計算します。

# looopでんきの定数
area_loss_rate = 6.9/100 # 東京エリア損失率 %
service_fee = 5.5 # サービス料 円/kWh

# JEPX価格を読み込み
df_list = []
for filename in os.listdir("./"):
    if "spot" in filename:
        df = pd.read_csv(os.path.join(folder_path, filename), encoding="cp932")
        df_list.append(df)
df_combined = pd.concat(df_list)
df_combined['受渡日'] = pd.to_datetime(df_combined['受渡日']) # '受渡日'列をdatetime型に変換
df_combined['時刻'] = pd.to_timedelta((df_combined['時刻コード'] - 1) * 30, unit='m') # '時刻コード'を30分単位の時間に変換
df_combined.index = df_combined['受渡日'] + df_combined['時刻'] # '受渡日'と'時刻'を組み合わせて新しいdatetime型のインデックスを作成
df_combined.drop(columns=['受渡日', '時刻コード', '時刻'], inplace=True) # 不要な列を削除

# 容量拠出金相当額
capacity_contribution = pd.Series(0.0, index=pd.date_range(start="2021-04-01", end="2024-04-01", freq="30min"))
capacity_contribution.loc["2023-07-01":"2024-04-01"] = 2.2
capacity_contribution.drop(capacity_contribution.index[-1], inplace=True)

# 託送費
transmission_fee = pd.Series(9.61, index=pd.date_range(start="2021-04-01", end="2024-04-01", freq="30min"))
transmission_fee.loc["2023-04-01":"2024-04-01"] = 9.78
transmission_fee.drop(transmission_fee.index[-1], inplace=True)

# 再エネ賦課金を30分毎データにする
tepco_rates_half_hourly = tepco_rates['再エネ賦課金'].resample('30min').ffill()
tepco_rates_half_hourly.drop(tepco_rates_half_hourly.index[-1], inplace=True)

# 電気料金を計算
purchased_power = df_ext_half["買電"] # 買電量
electricity_bill = purchased_power * (df_combined["エリアプライス東京(円/kWh)"] / (1 - area_loss_rate) * 1.1 + transmission_fee + service_fee + tepco_rates_half_hourly + capacity_contribution)

# 月毎に集計
monthly_bill = electricity_bill.resample('M').sum()
monthly_bill.index = monthly_bill.index.to_period('M')

JEPXのCSVファイルは日付と時刻が別の列になっているので1つのdatetime型にしておきます。 計算した電気料金は以下のグラフのようになりました。市場価格の高かった22/1、22/3が高くなっています。一方市場価格の低い月は3000円以下とかなり安価で済む結果になっています。

Looopでんき スマートタイムONEの3年分の電気料金

5. 東京電力とLooopでんきの比較

それでは、2つの電力会社で電気料金の比較をします。2つの電気料金の差を計算して、グラフに描画したのが以下の図です。

東京電力とLooopでんきの電気料金比較

全体的な傾向として、春~秋は電気料金はLooopでんきのほうが小さく、毎月1~2千円くらい安くなります。冬場はほぼトントンですが、21/12~22/3は圧倒的にLooopでんきが高くつき、最大7000円高い月がありました。

年度別に電気料金を比較したのが以下の表です。

年度 東京電力
スマートライフL
Looopでんき
スマートタイムONE
電気料金の差
2022 92,965 95,233 -2,269
2023 114,879 105,420 9,458
2024 94,079 82,344 11,735

2023-2024年度は1万円ほど年間トータルでLooopでんきが安価でしたが、2022年度は冬の市場価格高騰のせいで2,300円高くついてしまいました。

とはいえ、平年通りであればLooopでんきが年間トータルでは安価になりそうですし、高騰しても冬だけで1年通してみれば大きな差ではないので、乗り換えてもよさそうに思います。

6. 冬の電気料金を抑える方法

22年冬のように市場価格が高騰したときにも電気料金を抑えることはできるでしょうか。

Looopでんきなど各電力会社は、でんき予報という電気料金予測サービスを持っています。

looop-denki.com

これで単価が上がってしまうことが予想される場合、その時間の電力使用を抑えたり、蓄電池を他の時間に充電しておいて単価の高い時間に放電する、という方法がとれそうです。

例えば、22年冬で最も単価の高かった3/22とその前後2日を見てみると、以下のような料金単価と電力量でした。

2022/3/22付近のJEPXエリアプライス

2022/3/22付近の電力量

3/21の夕方、3/22の昼から3/23深夜にかけて、価格が80円に張り付いています。

3/21, 22は日中太陽光で発電・充電できるので充電し、夕方放電すれば何とかなるでしょう。3/24のように発電が昼になくても、価格が下がってくれればそこで充電して、単価が上がる夕方に放電することで料金は抑えられそうです。手動でやるのは手間ですが、予報の情報を取ってこれれば自動で行うこともできるでしょう。

ただ、3/23の常時80円という価格で昼間太陽光もないとなると手の出しようがありません。前日の太陽光でできる限り暖房・貯湯しておいてこの日は暖房止めるくらいでしょうか。まあそれも大変なので、この場合は諦めて高い電気を買うよりほかなさそうです。

まとめ

2023年度の買電量データを使って、東京電力オール電化プランと、新電力(Looopでんき)のプランを比較しました。

結果として、平年通りなら新電力のほうが年間1万円安くなりそうなこと、市場価格が高騰しても1日の中で高低があれば蓄電池で料金を抑える手段があること、がわかりました。

このため、電力会社を乗り換えても問題なさそうですので、乗り換えようかと思います。

今回はLooopでんきを対象にしましたが、蓄電池を増やす前提ならタダ電なんかもありかなあと思います。ただこれもシミュレーションしてみたほうがいいかもしれません。

【一条工務店i-smile】入居後1年間(23/4~24/3)の電力量および電気料金と太陽光・蓄電池メリット

以前、入居後半年、9か月後の電力量、電気料金を記事にしました。

dededemio.hatenablog.jp dededemio.hatenablog.jp

3月末で1年分のデータがたまったので、1年分の電力量、電気料金を紹介します。

建物概要

電力量

我が家の入居後1年間の電力量(kWh)は以下の通りでした。*1

年月 発電 消費 売電 買電 充電 放電
2023/04 1,094 423 734 95 166 134
2023/05 1,187 491 733 79 206 165
2023/06 998 514 533 88 204 167
2023/07 1,357 640 812 136 222 182
2023/08 1,237 691 662 159 227 185
2023/09 865 696 345 214 196 159
2023/10 794 579 303 133 228 185
2023/11 568 635 115 225 219 178
2023/12 563 746 87 317 254 208
2024/01 625 800 153 370 215 173
2024/02 592 712 201 355 156 124
2024/03 908 798 390 320 194 155
合計 10,789 7,726 5,069 2,491 2,487 2,015

入居後1年の電力量グラフは以下の図のようになりました。

  • 入居(2023/4)からの自給率等は以下でした。
    • エネルギー自給率*2は67.8%
    • 売電を含んだトータルのエネルギー自給率*3は139.6%
    • 自家消費率*4は53.0%
  • 売電を含むトータル(ネット)の自給率は140%で、実績値でも『ZEH』(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)*5を達成できています。
  • 自給率、自家消費率が高いのは蓄電池のおかげですね。
  • 売電単価が安いので今後も買電をなるべく減らし自給率を上げていきたいです。初年度は空調・床暖など手探りなところが多かったですし、エコキュートの湯も沸かしすぎていたので、調整して省エネできればと思います。

電気料金

入居後1年の電気料金は以下の通りでした。

年月 電気料金[円] 売電収入[円]
2023/04 5,293 12,121
2023/05 4,727 12,070
2023/06 5,146 8,908
2023/07 5,577 11,254
2023/08 6,371 12,869
2023/09 7,500 7,752
2023/10 6,710 5,083
2023/11 7,958 2,686
2023/12 9,275 1,428
2024/01 11,588 1,870
2024/02 11,798 3,315
2024/03 10,406 6,375
合計 92,349 85,731

入居(2023/4)からの電気料金グラフは以下の図のようになりました。

  • 4-9月は黒字(売電額が多い)、10-3月は赤字(買電額が多い)となりました。1年間の総計では6,618円の出費です。下半期の電気料金が総じて高いのは、7月の中頃から電気料金単価がかなり上がった*6のと、9月から家族が1人増えたことも影響していると思います。
  • 買電だけを見ると、年間トータルで92,349円でした。ちなみに、転居前の賃貸(RC5階建てマンション、3LDK、65㎡)では、2022年度の電気+ガス料金実績で年間263,433円でしたので、年間170,227円光熱費が浮いたことになります。

太陽光・蓄電池のメリットと回収年数

上記の電気料金は太陽光・蓄電池のおかげで達成しているともいえるので、これらによってどの程度電気料金を下げられたのか、太陽光・蓄電池が無かったらどうなるかを考えてみます。

太陽光発電を自家消費に回した分は、(発電量-売電量-充電量)で計算できます。年間トータルで3,233[kWh]でした。これに昼間の電気料金単価をかけると、105,886円が太陽光パネルのメリットになります。

蓄電池メリットは放電量=2,015kWhになります。節エネモードで昼間太陽光で充電→夕方~夜放電していましたが、夜11時までにほぼ使い切っていたので、こちらも昼間の電気料金単価をかけて、65,928円が蓄電池のメリットになります。

というわけで、太陽光・蓄電池分も買電していた場合は年間電気代が264,163円になるだろうと考えられます。

買電金額(a) 自己消費分の
電気代節約(b)
蓄電池分の
電気代節約(c)
本来電気代
(a)+(b)+(c)
92,349 105,886 65,928 264,163

転居前賃貸とほぼ同じですね。延床が65->105m2と1.6倍で全館空調しているにもかかわらず同等程度で済んでいる、とも言えるかと思います。

次に太陽光・蓄電池システムの初期費用の回収年数を考えてみます。1年間の売電収入と太陽光・蓄電池による光熱費削減量の合計は257,545円でした。年1%ずつ出力が低下すると考えると、10年目までの平均では24.5万くらいになります。太陽光・蓄電池システムの価格は193万円だったので、約8年で回収できる、という計算になります。

搭載費用 年間メリット 回収年数
193万円 24.5万円 7.83年

まあ去年7-8月の夏は特に発電量が高かったですし、メンテナンスもあるのでこの通りとはいかないでしょうが、建てる前に見せていただいたシミュレーションの費用回収期間13年よりは早いペースで回収できそうです。

*1:一条パワーモニターアプリで集計した電力量実績値を記載。誤差があるので料金÷単価とは合致しない

*2:消費に対して買電以外で賄った電力量 (1-買電÷消費)×100[%]

*3: 発電÷消費×100[%]

*4:発電電力のうち自家消費した割合 (1-売電÷発電)×100[%]

*5:ZEHの定義(改定版) - 資源エネルギー庁

*6:昼25.87->35.96、深夜18.37->28.06

Raspberry Piを使った温湿度CO2濃度ロガーの製作

最近、一条工務店で新居を建てた記事をいくつか書いています。

新居でやりたかったことの1つは、室内の環境を計測し、適切な環境を維持するように空調などの機器の設定をちゃんと調整する(できればそれを自動としスマートホーム化する)ということです。

そこで、まずは温湿度とCO2濃度を計測することにしました。温湿度はSwitchBotなどの便利なセンサがありますが、CO2濃度は選択肢が限られます。既存のスマートホーム製品でCO2濃度が測れるものはいくつかあるのですが、生データ取得が難しいものが多く、Raspberry Piで自作することにしました。

本記事の目次です。

1. ハードウェア

1.1 CO2センサ

いくつか候補がありましたが、作り始めたのがちょうど以下のツイートが流れてきたタイミングだったため、アイ・オー・データのUD-CO2Sを使いました。

UD-CO2Sは、温湿度CO2がUSB接続で計測でき、光学式・キャリブレーション機能がついているタイプです。

ツイートの通り一時期2,000円台まで値下がりしていましたが、あいにく生産終了*1となって価格は徐々に上昇し、現状8,000円くらいで推移してます。これでもまだ定価12,000円の70%で、機能を見れば比較的安価な方だと思います。私は3000~5000円で5台購入しました。

1.2 Raspberry Pi

Raspberry Piは家に転がっていた1A+, 3B+, 4Bを使いました。Pythonソフトで温湿度CO2濃度データの取得をしたのですが、どのRaspberry Piでも問題なく動作しました。Zeroでも動作するんじゃないでしょうか。

Raspberry Pi 4BとUD-CO2Sを接続した写真が以下になります。実際設置するときは、Raspberry PiのCPUも3B~4Bくらいになるとそこそこの熱源になるので、なるべくセンサから離して設置できる場所を探したほう良いです。写真ではUSBケーブルを束ねていますが、私はこれをなるべく伸ばして設置するようにしています。

2. データの取得

2.1 既存ソフトの調査

上記のツイートに、chissokuというデータ取得ソフトが紹介されています。

github.com

こちらはGoで開発されており、LinuxWindowsでそれぞれ動作するバイナリが用意されています。しかし、私の環境ではいずれの環境でも1週間程度継続動作さると必ずエラーで落ちてしまい、その後USBを物理的に再接続しないと復帰できなくなる現象に見舞われました。

そこで、Pythonで計測ソフトを自作することにしました。

2.2 UD-CO2Sのコマンド調査

UD-CO2SはUSBシリアル通信デバイスとして認識されます。以下のコマンド・動作があるようです。

  • STAというコマンドを送ると、最初にOKが返り、その後CO2=644,HUM=43.4,TMP=31.8のような文字列を一定間隔で返す
    • 間隔は2秒ほど、正確に2秒ではないので、リサンプリングが必要
    • OKではなくNGが返る場合、計測値は返ってこない。再度STAを送る
  • STPというコマンドを送ると文字列を返すのを中止する
  • FRC=値というコマンドでで指定した値にCO2濃度をキャリブレーションする

2.3 PythonによるUD-CO2データ取得

上記のコマンドを踏まえて、以下のソフトを作成しました。

github.com

これをRaspberry Piをセットアップして実行させます。*2 動作確認したRaspberry Pi OSとPythonのバージョンは以下です。

  • Raspbian 11.7
  • Linux version 6.1.21-v8+
  • python 3.9.2
  • pyserial 3.5b0

機能としては以下になります。

  • 起動日の日付のCSVファイル(yyyy-mm-dd.csv)を作成する。
  • UD-CO2Sと通信し、取得した温湿度・CO2濃度データをCSVファイルに記録する
    • 温度は高めに出ているようなので、計測値を-4.5℃とする補正をする*3 *4
    • 相対湿度は、補正前温度時の絶対湿度から補正後温度の時の相対湿度を計算し、その値に変更する
  • 日付が変わったらプログラムを終了する
    • 毎日1回ソフトを起動する使い方を想定

このpythonスクリプトを実行すると、CSVファイルに以下の書式で1分毎のデータが記録されます。

datetime, temperature, humidity, co2
2024/01/12 00:00:03, 22.6, 46.8, 1010
2024/01/12 00:00:07, 22.6, 46.6, 1010

キャリブレーション機能はまだつけていません。

2.4 cronによる定期実行の設定

上記のソフトを定期的に実行するよう、cronの設定をします。 crontab -eして、以下を記入します。

0 0 * * * python /home/pi/work/sanketsu.py 2>&1 | tee -a /home/pi/work/co2.log
@reboot python /home/pi/work/sanketsu.py 2>&1 | tee -a /home/pi/work/co2.log

毎日0:00に起動させます。また、@rebootの行も追加することで、Raspberry Piが不意に再起動した際も実行されるようにします。

2>&1より後ろは、Python実行時の標準出力・標準エラー出力をファイル出力するためのものです。

3. 計測場所と実測データの例

家では、主に人がいる2Fの洋室に各1個ずつと、リビングに1個設置して温湿度CO2を計測するようにしました。

典型的な1日のCO2濃度の推移は、以下のような感じです*5

CO2濃度推移の例

いまは寝室(Bedroom)と洋室2(Western2)の2部屋でドアを閉めて寝ているので、これらの部屋のCO2濃度が夜間に高くなります。また昼間は主にリビングで過ごすので、リビングの濃度が高くなり他の部屋は低くなっています。高くとも1100ppm程度で抑えられているのは、ロスガードの計画換気によるものです。

ただ、洋室は給気口が部屋の手前側にあるので、ずっと起きていてCO2発生が多かったりするともうちょっと濃度が上がったりします。今後の部屋の使い方によっては、ドアを開けたり、サーキュレーターを回すなどしないといけないかもしれません。

そのうち、CO2濃度が高くなったらサーキュレーターを回す、みたいな自動化もやりたいと思います。

おまけ:Windowsでの計測(公式ソフト「CO2換気モニター」)

UD-CO2Sは公式でWindows用の計測ソフトが用意されています。常時起動するWindows PCのある部屋なら、PCにUD-CO2Sを接続してこのソフトを使うのが手軽です。

www.iodata.jp

ソフトを起動すると、C:\Users\ユーザー名\AppData\Local\I-O_DATA\CO2換気モニター.exe_Url_flegl41yev3u0r0b0ykag1c51i0d412p\1.1.0.0\logsというフォルダにテキストファイルで計測結果が1週間分保存されます。

1週間より古いものは削除されてしまうので、定期的に別の場所にコピーするタスクなどを用意しておけばよいです。

ファイル名はlogyyyymmdd.txtで1日1ファイルとなっており、以下の書式で1分毎のデータが記録されます。

2023-06-26 00:00:27.190 +09:00 [INF] ,PORT:COM7, CO2:546, TMP:28.7, HUM:56.7,

*1:同様にUSB接続で計測できそうなCO2センサはCO2-miniシンワ測定のものがある

*2:Raspberry Piのセットアップは巷に山ほど記事があるのでそちらを参照

*3:UD-CO2S の温度と湿度を補正する | monolithic kernel

*4:UD-CO2S - oquno公開メモ

*5:このグラフはStreamlitで作成。Streamlitについてもまた記事にするかも

【一条工務店i-smile】換気扇フィルタ設置と9か月使用後の汚れ具合(風呂・トイレ・キッチン)

一条工務店の家では、ロスガード90という全熱交換換気システムが標準でついており、計画換気されています。

www.ichijo.co.jp

一方、風呂・トイレ・キッチンにはこれとは別に換気扇がついています。これらの換気扇は標準のフィルタのようなものは無いのですが、私はそれぞれにフィルタを別付けしました。また、フィルタ設置後9か月で汚れ具合の確認・交換をしたので、その状況を紹介します。

風呂

風呂の換気扇は、PanasonicのFY-17C6UJKという型番のものがついています。シャッターがついていて外気が入ってこないようなタイプのもののようです。

www2.panasonic.biz

営業さんに聞いたところ、風呂の換気扇はフィルタは特にいらないのでは、と言われました。おそらく、比較的清潔な室内空気が外に出ていくことと、外に出ていく空気をわざわざきれいにする理由がないことから、そう言われたのかなと思います。

ただ、以前の賃貸で風呂換気扇が結構汚れて、埃が落ちてきたり、掃除が大変だった記憶があったので、風呂にもフィルタはつけておこうと思いました。

近所のニトリで買った以下のフィルタを切り貼りして、写真のようにつけてみました。

www.nitori-net.jp

風呂換気扇へのフィルタ設置状況

Webで買えるものだと、以下のようなフィルタがあるようです。15cm角だと少し小さいので20cm角のものがよさそうです。次はこれを買おうと思います。

その9か月後の結果がこれです。

風呂換気扇フィルタ(9か月使用し取り外し後)

使用頻度としては、夏場~中間期は風呂使用後は1hほど換気扇を回し、冬場はほとんど回さず風呂の湿気はサーキュレーターで家全体に拡散するようにしていました。使用時間としては少な目だと思いますが、それでもそこそこ汚れがついています。換気扇のファンはほとんど汚れていませんでしたが、フィルタなしだと換気扇自体も結構汚れそうです。

風呂換気扇のフィルタは、半年~1年に1度交換するのがよさそうに思いました。

トイレ

トイレの換気扇は、三菱電機のV-08PED6-IJという型番で、とじピタというシリーズの密閉シャッター付きのものでした。換気ONの時だけ開く構造で、外気が室内に入りにくいようになっています。

https://www.mitsubishielectric.co.jp/ldg/ja/air/products/ventilationfan/pipefan/tojipita/img_tojipita01.jpg

www.mitsubishielectric.co.jp

こちらもフィルタは特に不要のはずですが、先ほどのフィルタを換気扇サイズに合わせてカットし、写真のようにつけておきました。1F、2Fそれぞれにトイレがあるので両方につけてあります。

トイレ換気扇に設置したフィルタ

9か月後にフィルタを取り外したところ、使用頻度の高い1Fトイレはかなりほこりがついていました。

トイレ換気扇のフィルタ(9か月使用し取り外し後)

2Fはほとんど汚れていなかったのでフィルタ交換しませんでした。(写真なし)

トイレ換気扇の使用頻度としては、照明のPanasonic人感センサスイッチと連動で、換気扇ON、人がいなくなってから5分後にOFFにしていました。使用頻度の高い1Fは半年~1年に1回、使用頻度の低い2Fは2年に1回くらいの交換頻度が良さそうです。

キッチン

キッチンの換気扇は、FUJIOHのSBARL-902LS-IJという型番のものでした。AriafinaのBarchettaというシリーズのものと思われますが、廃盤なのか同一型番のものは探せず…廃盤だとしても製品情報は残しておいてほしい…

キッチン換気扇

www.ariafina.jp

この換気扇は、金属板に穴の開いた板がフィルタとしてついているのですが、これでは心もとないので、別フィルタをつけることにしました。

フィルタとしてスターフィルターを設置する例が多い*1*2ので、我が家でも真似てみました。サイズは297mm×400mmにすると換気扇にピッタリサイズでいい感じに設置できます。

いきなり汚れた写真ですみませんが、9か月後の結果がこれです。

スターフィルターを設置9か月後

裏面はこんな感じ、ふちの白色の部分と色を比較すると汚れているのがわかります。

スターフィルター設置9か月後裏面

ちなみに、スターフィルターでかなり汚れがとれているのか、フィルタの奥・ファンは全然汚れていません。

キッチン換気扇

フィルタ手前の整流板はどうしても掃除する必要がありますが、換気扇掃除はかなり楽になりそうです。

キッチンの使用頻度としては、毎日使用で、朝は使用せず、昼は麺(ほとんど蒸気のみ)、夜に油を使った料理する、といった感じでした。揚げ物みたいな料理はあまりしないものの、炒め物が多いので、比較的多く油汚れがついていたように思います。もう少し使用頻度高いなら半年、使用頻度低いなら1年くらいで交換するのがよさそうです。

【一条工務店i-smile】無暖房時の室温低下とその予測

先日、旅行のため家を3日間開けていました。この間、あえて床暖房を停止し、冬期にi-smileがどれだけ室温が維持できるかを検証してみました。

また、外気温、家の消費電力=内部発熱などのデータから、室温低下度合を予測できるんではないかと思いチャレンジしてみました。

この記事の目次は以下です。

暖房停止時の室温低下

さっそくですが、室温低下がどの程度だったか、グラフを示します。 通常どの程度の温度なのかもわかるように、あえて暖房OFFの前日からデータを掲載しています。

暖房停止時の室温推移

この時の室の条件は以下です。

  • 暖房停止期間は曇り~積雪のあった2/4~2/6で、日射はほぼなし
  • 2/4朝5:00頃暖房停止し、2/6 17:30頃からエアコン暖房を再開
  • 室内は無人、冷蔵庫・PC etc...の0.4kW弱程度の電力消費=内部熱負荷あり
  • 外気温は期間中平均4.8℃
  • 換気(ロスガード)はONのまま

グラフを見ると、家中の温度差はほとんどなく、2/4 5:00の22℃から開始して、22時間後(2/5 3時)に18℃、36時間後(2/5 17時)に15℃程度まで低下しています。

i-smileは、22℃スタートで冬に無人・無暖房・無日射でも約1日は18℃以上を維持できるくらいの性能だ、と言えそうです。

ちなみに、無暖房時でも洗面所・書斎は温度差があります。洗面所は2/4深夜に衣類乾燥機を回したためそこからしばらくは温度が高くなっていますが、時間経過とともに他の部屋と同じくらいになっています。書斎では常時PCが稼働しているため温度が高くなっています。

暖房停止時の室温低下の予測

先ほどのデータから、室温低下がどの程度かはわかりました。今度は、これを予測することを考えます。

室の熱損失と室温低下は以下で計算できます。

  • 熱損失[W] = 外皮熱損失[W] + 換気熱損失[W] - 内部熱負荷[W] - 日射熱取得[W]
    • 外皮熱損失 = 壁面積[㎡] × 熱貫流率(Ua値)[W/㎡K] × (外気温[℃] - 室温[℃])
    • 換気熱損失 = 0.33 × 風量[m3/h] × (外気温[℃] - 室温[℃])× 顕熱交換効率[%]
    • 内部熱負荷は家の機器発熱=消費電力
    • 日射熱取得 = 水平面日射強度[W/m2] × 日射取得率(ηAH値)*1 ÷ 100 × 外皮面積[m2]
  • 1分あたりの温度低下[K] = 熱損失[Wh=Jh/sec]×3600[s/h]÷60[h/min] ÷ (室内空気の熱容量[J/K] + 構造材・家具などの熱容量[J/K])
    • 室内空気の熱容量[J/K] = 室容積[m3] × 空気密度[kg/m3] × 空気比熱[J/kgK]

設計時の外皮平均熱貫流Ua値、平均日射取得率ηAH値を使い外皮熱損失・日射熱取得を計算し、換気・内部熱負荷を加えてトータルの熱損失を計算します。熱損失と室の持つ熱容量を使って1分あたりの温度低下を繰り返し計算すれば、温度低下推移が予測できるはずです。

この中で不明なのは、室の熱容量です。室内の空気の熱容量は、室容積と空気の密度・比熱から求まりますが、構造材・家具などの熱容量を1つ1つ調べて積算するのはかなり骨ですので、この熱容量を少しずつ変えて上記を計算して、実データとフィッティングしていきます。

計算条件は以下とします。

  • 空気の密度は20℃で1.025[kg/m3]、比熱は1,006[J/kgK] *2
  • Ua値は0.4[W/m2K]、室容積は254[m3]、外壁面積は254[m2]
  • 正解データとなる室温は、書斎・洗面所以外の部屋の平均温度
  • 床暖房パイプの温度が十分室温同等となる2/4 17:00以降~暖房ONする前の2/6 17:00のデータで検証
  • 室内発熱として、エコキュート以外の消費電力分(平均0.4kW)の発熱があったと想定
  • ロスガードの顕熱交換効率は、吹出口(SA)温度と外気、室温から以下の式で計算
    • 顕熱交換効率[%] =100 -(SA温度 - 室温) ÷(外気 - 室温)
  • 水平面日射強度は、太陽光発電量の実績値から以下で計算
    • 水平面日射強度[W/m2] = 太陽光発電量[Wh] ÷ (1-損失[%]) ÷ 太陽光パネル容量[kW] ÷ 斜面変換係数
      • 損失は10[%]、パネル容量は8.5[kW] *3
      • 斜面変換係数は、水平面日射強度に対する斜面日射強度の比。日射量データベース*4の水平面日射量と8°の斜面日射量から1.082に設定

上記条件で、構造材・家具の熱容量を変更してフィッティングした結果が以下です。

暖房停止時の室温と予測値

2/4~2/6朝までは予測値と実測値がおおむね一致しました。2/6昼頃に実測の温度が少し高くなっていますが、要因がよくわかりません。ここで動かしたものといえば、夜に使うためにエコキュートを運転させたくらいなのですが、屋外ですし湯を使ってるわけでもないので、他の要因だと思います。

構造材・家具の熱容量は約23.5[MJ/K]となりました。住宅省エネ基準で蓄熱利用有無を判定する際の熱容量の閾値が170[kJ/m2K] *5らしく、延床106[m2]の場合18[MJ/K]となります。i-smileでも通常の住宅よりは断熱材・床暖房の水など蓄熱要素が大きいので、基準より大きい熱容量だと考えられますから、オーダーとしては大体妥当な数値が得られたのかなあと思います。

無暖房・日射ありの場合の室温低下予測

ここから先は実測がないので与太話ですが、無暖房でも日射があり人が中にいる場合にはある程度室温が維持できるはずで、これがどの程度なのか、無暖房でも過ごせるのかを、計算で求めてみたいと思います。

先ほどと同様に、室の熱損失と室温低下を計算します。ただし、条件は以下とします。

  • 2/4 05:00~2/6 18:00のデータで検証。外気温、ロスガード効率などは実績値を利用
  • 内部熱負荷として、消費電力分(平均0.4kW)と、人体発熱(4人×(人体顕熱59W+機器50W))があったと想定
  • 日射熱取得計算のための水平面日射強度は、METPV-20の2月晴天日の平均値を利用

2月の晴天日の水平面日射強度は、以下のような形でした。

日射強度(2月晴天日の平均)

この時の無人・有人時の室温予測結果は以下のようになりました。

暖房停止時の室温と、日射あり時の予測値

オレンジの線を見るとわかる通り、日射ありでも無人だと2日くらいで18℃を下回ってしまう結果になりました。日射ありで4人の人が中にいて活動していれば、緑色の線のように2~3日は20℃を下回らずに過ごせそうです。

ただ、実際は平均室温が20℃あっても床温はもう少し低くなり不快と思います。また、外出時や雲がかかった場合は熱取得が不足し、すぐ20℃を下回ってしまうでしょう。こういうことを考えると、やはり暖房なしで過ごすのは難しそうです。

まとめ

  • 一条工務店i-smileで、2月頭に2日半の間、無人・無暖房時の室温を測定しました。日射がほとんどなくとも24時間は18℃以上をキープしましたが、2日半後には13℃程度まで室温が低下することがわかりました。
  • 外気温、Ua値、ηAH値、日射量などを用いて室温を予測する式を構築しました。我が家の場合、構造材・家具の熱容量を23.5[MJ/K]とすると、室温がある程度予測できそうだということがわかりました。
  • 室温予測式を用いて、日射が十分あり、室内に人もいる場合の室温を計算したところ、無暖房でも室温20℃以上はキープできそうなことがわかりました。ただ現実的には無暖房で過ごすのは厳しく、暖房が必要だと思いました。

オルカン他投資信託の約定日(月初~月末)別リターンの分析

毎月投資をしていると、月初の株高などが気になることがあります。

以前、日経平均とS&P500が積み立て投資日によってリターンが違う、というのをX(旧Twitter)で見かけました。 これは、以下が出どころのようです。

www.nikkei.com

「月初の株高」 投信積み立てのベストタイミングは? - 日本経済新聞より引用

この記事には、日経平均とS&P500だけでなく、つみたてNISA対象のいくつかの投資信託についても分析されており、投資信託によって傾向が異なることが示されています。

じゃあ、よく投資対象として挙げられるオルカンはどうなのか、また他の投資信託は?といったところが気になったので、計算してみました。

本記事の計算内容はPythonで記述しており、以下のGitHubからダウンロードできます。 Windows 10 + Python 3.11.7で動作を確認しています。

github.com

本記事の目次です。結果だけ見るには、4. 計算結果まで飛んでください。

1. 分析対象の投資信託

分析対象の投資信託は、SBI証券のNISA積立設定の月間ランキングの上位5位としました。オルカンはもとより、S&P500やNASDAQなどのファンドが含まれます。

NISA月間積立設定金額ランキング(SBI証券HPより引用)

分析対象の投資信託と設定年一覧が以下になります。

No. ファンド名 設定日
1 三菱UFJ-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 2018/10/31
2 三菱UFJ-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 2018/07/03
3 SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド 2019/09/26
4 ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド 2023/3/31
5 大和-iFreeNEXT FANG+インデックス) 2018/01/31

2. データ取得

投資信託のデータは、大体投資信託HPで設定来データが公開されていますので、それをダウンロードしてきます。ダウンロード元は先ほどの表に記載した通りです。

データはCSVなのですが、会社によってフォーマットが異なるので、前処理をして保存しなおします。

# 株価データの整理------------------------------------
file = "eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー).csv"
df = pd.read_csv(file, encoding="shift-jis", header=1, index_col=0)
df.index = pd.to_datetime(df.index)
df.to_csv(os.path.splitext(file)[0]+"_修正.csv", encoding="utf-8-sig")

file = "eMAXIS Slim 米国株式(S&P500).csv"
df = pd.read_csv(file, encoding="shift-jis", header=1, index_col=0)
df.index = pd.to_datetime(df.index)
df.to_csv(os.path.splitext(file)[0]+"_修正.csv", encoding="utf-8-sig")

file = "<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド.csv"
df = pd.read_csv(file, encoding="shift-jis", header=0, index_col=0)
df.index = pd.to_datetime(df.index, format="%Y年%m月%d日")
df = df.drop(df.columns[0], axis=1)
df = df.sort_index()
df.to_csv(os.path.splitext(file)[0]+"_修正.csv", encoding="utf-8-sig")

file = "SBI・V・S&P500インデックス・ファンド.csv"
df = pd.read_csv(file, encoding="shift-jis", header=0, index_col=0)
df.index = pd.to_datetime(df.index, format="%Y%m%d")
df.to_csv(os.path.splitext(file)[0]+"_修正.csv", encoding="utf-8-sig")

file = "iFreeNEXT FANG+インデックス.csv"
df = pd.read_csv(file, encoding="shift-jis", header=0, index_col=0)
df.index = pd.to_datetime(df.index, format="%Y%m%d")
df.to_csv(os.path.splitext(file)[0]+"_修正.csv", encoding="utf-8-sig")

処理の内容は以下のようなものです。

  • エンコードをShift-JIS→UTF-8(BOM)に変更
  • SBIと大和のファンドは0~1列目が日付・基準価格となっているのでそれをそのまま取得
  • eMAXISは1行目にファンド名が含まれるのでそれをスキップ
  • ニッセイは1列目にファンド名があるのでそれをスキップし、新しい順になっているので並び替え

3. リターンの計算

毎月固定日に投資した時の、設定来のトータルリターンを以下の条件で計算します。

  • 設定日より最初の月初から、2023/12月末までのデータを利用
    • どれも大体5年前後データがあります
    • NASDAQ100だけ設定日が1年以内と短めのデータなので、ちょっと信頼性が低いです
  • 土日祝日は翌営業日買い付け、2月の29日・30日は2月末に買い付け

以下の関数calc_return_by_day_of_monthに、pandas.DataFrameとして読み込んだCSVデータを渡してやると、日別リターンを計算できます。

def calc_return_by_day_of_month(df):
    return_by_day= []
    for d in np.arange(1, 31, 1):
        # 土日祝日は翌営業日買い付けのため、後ろ方向に穴埋め
        df_fill = df.asfreq("D", method="bfill") 
        # データ最初と最後の月途中のデータは削除
        first_month = df_fill.index[0].month
        first_year = df_fill.index[0].year
        last_month = df_fill.index[-1].month
        last_year = df_fill.index[-1].year
        df_fill = df_fill[(df_fill.index.year!=first_year) | (df_fill.index.month!=first_month)] # 最初に日付が1日になるまでのデータを削除
        df_fill = df_fill[(df_fill.index.year!=last_year) | (df_fill.index.month!=last_month)] # 最後の月末以降のデータを削除
        # 指定した日付に対応する価格を取得
        price_by_day = df_fill[df_fill.index.day==d][df_fill.columns[0]] # 毎月d日の基準価額
        # 2月は29日、30日が無い場合がある。この場合月末日買い付けとし、2月末日データを入れる
        if (d==29) or (d==30):
            price_by_day = price_by_day.resample("M", convention="end").ffill() # 毎月でリサンプル
            price_idx_feb = price_by_day[price_by_day.index.month==2].index # 2月末日の日付
            price_feb = [df_fill[df_fill.index==p][df_fill.columns[0]].values[0] for p in price_idx_feb] # 2月末日データをdf_fillから取得
            price_by_day[price_by_day.index.month==2]=price_feb # 2月末日データを代入
        # 総取得価格・取得株数と評価額からリターンを計算
        price_acquisition = price_by_day.sum() # 取得価格
        num_of_stocks = len(price_by_day) # 取得株数
        # print(num_of_stocks)
        price_estimate = num_of_stocks * df.tail(1)[df.columns[0]] # 評価額
        gain = (price_estimate - price_acquisition) / price_acquisition # リターン
        return_by_day.append(gain.values[0]*100)

    print(return_by_day)

files = os.listdir(os.getcwd())
csvfiles = [f for f in files if "修正.csv" in f]
for file in csvfiles:
    df = pd.read_csv(file, encoding="utf-8-sig", index_col=0, parse_dates=[0])
    calc_return_by_day_of_month(df)

4. 計算結果

結果をグラフ化したものを以下に記載します。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

SBI・V・S&P500インデックス・ファンド

ニッセイNASDAQ100インデックスファンド

iFreeNEXT FANG+インデックス

全体の傾向としては、以下が言えそうです。

  • 約定日によるリターンの差は2%程度
    • iFreeNEXT FANG+は約5%も差があります。ただ、極端にリターンの低い29・30日を除けば3%ちょっとくらいですし、そもそもボラティリティの高い指数であるのが要因かと思います
  • 毎月1日がリターンが最も高い
    • ニッセイNASDAQ100だけ異なり、毎月8日が高くなっています。ただ、サンプル数が少ないため何とも言いづらいです。今後データが増えて行くと傾向が変わってくるかもしれません
  • 月初めに購入したほうがリターンが高く月末は低い
  • 15日~18日や25日~28日は比較的リターンが低い

なぜ月初めのほうがリターンが高いという傾向か、ちょっと考えてみます。

以下のサイトによると、基準価額は、①組入資産の変動・配当収益・為替損益、②運用費用、③分配金で変わるようです。今回対象とした投信は分配金は出ないので、①②が主要因になります。

www.am.mufg.jp

  • 月末か月初めに運用費用が計上され基準価額が下がる→月初めは低い基準価額で購入できる
  • 組入資産の配当が月中に出るので基準価額が上がる→15や25日は高い基準価額での購入になる

あたりが月初めがリターンが良いことの要因かなあと予想します。が、実際のところどうなのかはよくわかりませんでした。

おわりに

結論としては、今回分析対象の投資信託の設定来データを見ると、毎月1日に約定となるようにつみたて設定するのがいい、ということになりました。

ただ、最初の日経の記事にあるように、この傾向は今後変わる可能性が大いにありますし、2%程度と極端に大きな差にはならないので、入金日なども考慮して納得できる日に設定するのが良いかなと思います。

建て替え中の土地にかかる固定資産税・都市計画税

一条工務店i-smileを建てるにあたり、古家付き土地を購入し、解体→新築しました。

解体→新築が同一年であればよいのですが、私の場合は年をまたいでしまったので、固定資産税の課税基準日である1/1には土地に建物が立っていない状態でした。この場合、固定資産税が多く課税されてしまうようで、減額の手続きをしなければいけませんでした。

本記事ではその内容を紹介します。

通常の住宅用地の固定資産税・都市計画税

固定資産税は土地・家屋・償却資産に、都市計画税は市街化区域の土地・家屋に課税される税金です *1

毎年1月1日が課税の基準日となっていて、この日に所有する人に納税義務が発生します。税率は、課税標準額の1.4%(固定資産税)、0.3%(都市計画税)です。

課税標準額」は、相場(地価公示価格)の70%にするのが一般的だそうです*2

住宅が建っている土地については、住宅用地の課税標準の特例があり、200㎡以下の住宅であれば、課税標準額が固定資産税は1/6、都市計画税は1/3になります。

例えば、土地の地価公示価格が1000万だった場合、課税標準額は×0.7の1/6・1/3され、固定資産税・都市計画税はそれぞれその1.4%、0.3%で16,300円、7,000円となります。

住宅用地の特例がある場合の税額 固定資産税 都市計画税 合計
地価公示価格 1,000万円 1,000万円
課税標準額 116.6万円 233.3万円
税額 16,300円 7,000円 23,300円

古家付き土地を購入した場合、1/1の所有者に課税されているため、購入(所有権移転)日までとそれ以降で日割りして一年の残りの税金を支払うような取引になると思います。

建て替え中の土地の固定資産税・都市計画税

古家付き土地の古家を解体し、翌年竣工のスケジュールの場合、1/1時点で建物が建っていないことになります。この場合、固定資産税・都市計画税は基本的に非住宅用地として課税されてしまいます。

横浜市の土地の税額計算のページを見ると、非住宅用地の場合、負担調整措置として課税標準額が評価額の70%となり、それに本則税率がかかるので、先ほどの公示価格1000万の土地の例では、課税標準額が×0.7×0.7で490万円、固定資産税・都市計画税はそれぞれその1.4%、0.3%で68,600円、14,700円となります。

非住宅用地の税額 固定資産税 都市計画税 合計
地価公示価格 1000万円 1000万円
課税標準額 490万円 490万円
税額 68,600円 14,700円 83,300円

合計でみると、住宅用地の特例があった場合に比べ3.57倍、6万円もの差です。けっこう大きいです。

何も手続きをしないとこの税額がとられますが、継続住宅用地として認定されれば、住宅用地の課税標準の特例を受けることができ、税金を抑えることができます。

www.zennichi.or.jp

ただし、住宅用地として認定されるためには要件があり、以下が必要だそうです。

  1. 昨年住宅用地であったこと。
  2. 本年1月1日現在、住宅を建て替え中で来年1月1日までに完成すること。
  3. 建て替え前と同一の敷地であること。
  4. 住宅・土地の所有者が、昨年から来年まで原則として同一であること。

固定資産税・都市計画税減免(住宅用地認定)の手続き

手続きも自治体によって異なるようです。ぱっと検索したところ、東京都や枚方市の例が出てきました。

住宅を建て替える土地の特例措置のご案内 | 東京都主税局

www.city.hirakata.osaka.jp

横浜市の場合、区役所に行って、以下を提出すればよい、ということでした。

  • 申立書
    • これは区役所で書式がもらえます。継続住宅用地としての認定を申し立てる理由などを記載します。
  • 土地売買契約書(コピー)
  • 建築確認済証及び検査済証(コピー)

私の場合、実はこの手続きを知らず、年初に高い税額の請求があって一度納めたのですが、手続きを行ったところ差額を返金してもらうことができました。

私の場合は認定をしてもらえましたが、要件への適合や認定の手続き・条件などは各々違うと思いますし、法改正で変わってくる可能性もありますので、減免が可能かどうかは自治体の担当部署に問い合わせをするのが確実です。

この内容がどなたかの参考になれば幸いです。