【一条工務店i-smile】無暖房時の室温低下とその予測

先日、旅行のため家を3日間開けていました。この間、あえて床暖房を停止し、冬期にi-smileがどれだけ室温が維持できるかを検証してみました。

また、外気温、家の消費電力=内部発熱などのデータから、室温低下度合を予測できるんではないかと思いチャレンジしてみました。

この記事の目次は以下です。

暖房停止時の室温低下

さっそくですが、室温低下がどの程度だったか、グラフを示します。 通常どの程度の温度なのかもわかるように、あえて暖房OFFの前日からデータを掲載しています。

暖房停止時の室温推移

この時の室の条件は以下です。

  • 暖房停止期間は曇り~積雪のあった2/4~2/6で、日射はほぼなし
  • 2/4朝5:00頃暖房停止し、2/6 17:30頃からエアコン暖房を再開
  • 室内は無人、冷蔵庫・PC etc...の0.4kW弱程度の電力消費=内部熱負荷あり
  • 外気温は期間中平均4.8℃
  • 換気(ロスガード)はONのまま

グラフを見ると、家中の温度差はほとんどなく、2/4 5:00の22℃から開始して、22時間後(2/5 3時)に18℃、36時間後(2/5 17時)に15℃程度まで低下しています。

i-smileは、22℃スタートで冬に無人・無暖房・無日射でも約1日は18℃以上を維持できるくらいの性能だ、と言えそうです。

ちなみに、無暖房時でも洗面所・書斎は温度差があります。洗面所は2/4深夜に衣類乾燥機を回したためそこからしばらくは温度が高くなっていますが、時間経過とともに他の部屋と同じくらいになっています。書斎では常時PCが稼働しているため温度が高くなっています。

暖房停止時の室温低下の予測

先ほどのデータから、室温低下がどの程度かはわかりました。今度は、これを予測することを考えます。

室の熱損失と室温低下は以下で計算できます。

  • 熱損失[W] = 外皮熱損失[W] + 換気熱損失[W] - 内部熱負荷[W] - 日射熱取得[W]
    • 外皮熱損失 = 壁面積[㎡] × 熱貫流率(Ua値)[W/㎡K] × (外気温[℃] - 室温[℃])
    • 換気熱損失 = 0.33 × 風量[m3/h] × (外気温[℃] - 室温[℃])× 顕熱交換効率[%]
    • 内部熱負荷は家の機器発熱=消費電力
    • 日射熱取得 = 水平面日射強度[W/m2] × 日射取得率(ηAH値)*1 ÷ 100 × 外皮面積[m2]
  • 1分あたりの温度低下[K] = 熱損失[Wh=Jh/sec]×3600[s/h]÷60[h/min] ÷ (室内空気の熱容量[J/K] + 構造材・家具などの熱容量[J/K])
    • 室内空気の熱容量[J/K] = 室容積[m3] × 空気密度[kg/m3] × 空気比熱[J/kgK]

設計時の外皮平均熱貫流Ua値、平均日射取得率ηAH値を使い外皮熱損失・日射熱取得を計算し、換気・内部熱負荷を加えてトータルの熱損失を計算します。熱損失と室の持つ熱容量を使って1分あたりの温度低下を繰り返し計算すれば、温度低下推移が予測できるはずです。

この中で不明なのは、室の熱容量です。室内の空気の熱容量は、室容積と空気の密度・比熱から求まりますが、構造材・家具などの熱容量を1つ1つ調べて積算するのはかなり骨ですので、この熱容量を少しずつ変えて上記を計算して、実データとフィッティングしていきます。

計算条件は以下とします。

  • 空気の密度は20℃で1.025[kg/m3]、比熱は1,006[J/kgK] *2
  • Ua値は0.4[W/m2K]、室容積は254[m3]、外壁面積は254[m2]
  • 正解データとなる室温は、書斎・洗面所以外の部屋の平均温度
  • 床暖房パイプの温度が十分室温同等となる2/4 17:00以降~暖房ONする前の2/6 17:00のデータで検証
  • 室内発熱として、エコキュート以外の消費電力分(平均0.4kW)の発熱があったと想定
  • ロスガードの顕熱交換効率は、吹出口(SA)温度と外気、室温から以下の式で計算
    • 顕熱交換効率[%] =100 -(SA温度 - 室温) ÷(外気 - 室温)
  • 水平面日射強度は、太陽光発電量の実績値から以下で計算
    • 水平面日射強度[W/m2] = 太陽光発電量[Wh] ÷ (1-損失[%]) ÷ 太陽光パネル容量[kW] ÷ 斜面変換係数
      • 損失は10[%]、パネル容量は8.5[kW] *3
      • 斜面変換係数は、水平面日射強度に対する斜面日射強度の比。日射量データベース*4の水平面日射量と8°の斜面日射量から1.082に設定

上記条件で、構造材・家具の熱容量を変更してフィッティングした結果が以下です。

暖房停止時の室温と予測値

2/4~2/6朝までは予測値と実測値がおおむね一致しました。2/6昼頃に実測の温度が少し高くなっていますが、要因がよくわかりません。ここで動かしたものといえば、夜に使うためにエコキュートを運転させたくらいなのですが、屋外ですし湯を使ってるわけでもないので、他の要因だと思います。

構造材・家具の熱容量は約23.5[MJ/K]となりました。住宅省エネ基準で蓄熱利用有無を判定する際の熱容量の閾値が170[kJ/m2K] *5らしく、延床106[m2]の場合18[MJ/K]となります。i-smileでも通常の住宅よりは断熱材・床暖房の水など蓄熱要素が大きいので、基準より大きい熱容量だと考えられますから、オーダーとしては大体妥当な数値が得られたのかなあと思います。

無暖房・日射ありの場合の室温低下予測

ここから先は実測がないので与太話ですが、無暖房でも日射があり人が中にいる場合にはある程度室温が維持できるはずで、これがどの程度なのか、無暖房でも過ごせるのかを、計算で求めてみたいと思います。

先ほどと同様に、室の熱損失と室温低下を計算します。ただし、条件は以下とします。

  • 2/4 05:00~2/6 18:00のデータで検証。外気温、ロスガード効率などは実績値を利用
  • 内部熱負荷として、消費電力分(平均0.4kW)と、人体発熱(4人×(人体顕熱59W+機器50W))があったと想定
  • 日射熱取得計算のための水平面日射強度は、METPV-20の2月晴天日の平均値を利用

2月の晴天日の水平面日射強度は、以下のような形でした。

日射強度(2月晴天日の平均)

この時の無人・有人時の室温予測結果は以下のようになりました。

暖房停止時の室温と、日射あり時の予測値

オレンジの線を見るとわかる通り、日射ありでも無人だと2日くらいで18℃を下回ってしまう結果になりました。日射ありで4人の人が中にいて活動していれば、緑色の線のように2~3日は20℃を下回らずに過ごせそうです。

ただ、実際は平均室温が20℃あっても床温はもう少し低くなり不快と思います。また、外出時や雲がかかった場合は熱取得が不足し、すぐ20℃を下回ってしまうでしょう。こういうことを考えると、やはり暖房なしで過ごすのは難しそうです。

まとめ

  • 一条工務店i-smileで、2月頭に2日半の間、無人・無暖房時の室温を測定しました。日射がほとんどなくとも24時間は18℃以上をキープしましたが、2日半後には13℃程度まで室温が低下することがわかりました。
  • 外気温、Ua値、ηAH値、日射量などを用いて室温を予測する式を構築しました。我が家の場合、構造材・家具の熱容量を23.5[MJ/K]とすると、室温がある程度予測できそうだということがわかりました。
  • 室温予測式を用いて、日射が十分あり、室内に人もいる場合の室温を計算したところ、無暖房でも室温20℃以上はキープできそうなことがわかりました。ただ現実的には無暖房で過ごすのは厳しく、暖房が必要だと思いました。