一条工務店i-smileで家を建てる (8) 解体工事と滅失登記オンライン申請

この記事の続きです.

(記事タイトルは解体工事と登記ですが,解体工事についてはもう他のブログ等で語りつくされている感があるので, 本記事では滅失登記のオンライン申請を主に記載します.)

私が購入した土地には既存の建物があったため,解体業者に依頼して解体工事をしてもらいました.解体業者は一条工務店提携業者の紹介もあったのですが,最初から1社に見積もり・工事依頼すると相場観もわからないので他の会社にも相見積もりしてもらいました.結果として1割弱くらいの価格の差異があったので,提携外業者に依頼しました.

提携外業者に依頼をしても,外構工事ほどは工事期間への影響がないと思ったのと,調整などは一条工務店の営業さんにやってもらえたので,提携外業者にやってもらってよかったと思います.解体の見積もりをしていた段階では気づかなかったのですが,最近は以下のような比較サービスもあるので,こういったところを経由して比較検討すればより安価にできたかもしれません.ただ,多数の工事会社との現地調査日程の調整などの対応を行わないといけないので,その手間は余計にかかります.

建物を解体した場合,滅失登記をする必要があります.これを行わないと登記上は建物がまだ存在することになってしまい,(建物がないのに)建物の固定資産税が課税されるとか,新築建築許可が下りないといった問題が発生するようです.

法律上は建物解体後1か月以内に滅失登記をする必要があります.ただし,実際にはすぐ新築することが決まっている場合,解体後すぐではなく新築完了後の表示登記と合わせて滅失登記も行うこともあるようです.

滅失登記一つでも専門家に依頼すると数万円かかるのと,比較的容易にできそうだったので,自分で滅失登記にチャレンジしてみました.さらに,オンラインで登記できるということだったので,法務局の出張所は近場にありますが,オンラインで行ってみることにしました.

1. 滅失登記オンライン申請の基本的な手順


不動産登記のオンライン申請については,法務省の以下のHPにまとまっています.

しかし長いうえに知識がないと分かりにくい記載が多いです.操作手引書【簡易版】のページに,不動産登記申請【共通編】申請情報作成例③【建物の滅失登記編】という資料があるのでこれを見ながら手続きをするのがよいです.
(これでもまだわかりにくいですがずいぶんマシです.わたしはまずこれにたどり着くまでに紆余曲折しました.)

基本的な滅失登記の流れは以下のような形です.
 ①登記・供託オンライン申請システムへの登録
 ②必要書類の用意,ソフトのインストール
 ③申請書の作成
 ④添付情報への電子署名付与と添付
 ⑤申請情報の電子署名付与
 ⑥申請情報の送信
ソフトインストールまで行ってしまえばあとはソフト操作で何とかなるのですが,それまでが大変です.


2. 必要書類・環境

必要な書類はオンラインでも窓口でも変わらず以下が必要です.(厳密には地方の法務局によって変わるらしいのですが.同じ手続きなのに必要書面が運用者によって変わるとかやめてほしいですね.)
  • 解体業者が発行した解体証明書・建物取り壊し証明書など
  • 解体業者の印鑑証明書
  • 解体業者の資格証明書または会社謄本
    上記3つは解体業者に依頼して発行してもらいます.
  • 住宅地図・解体後写真
    Googleマップスクショに丸を付けたものでいいそうですが,場合によっては解体後写真もあるとよいとのこと.
  • 建物登記簿謄本
    自分で取得した土地の上に立つ建物の解体の滅失登記なので,建物自体の登記簿謄本は所有権移転登記の際のものを持っているものとします.なければ,最初にシステム登録時に簡易に取得できるので取得します. 

参考:解体から新築までの建て替え登記を自分で行う方法 - コノイエ 

さらに,オンライン手続きには以下が必要です


3. ソフト利用準備

まず,マイナンバーカードをPCから使えるようにしなければいけません.上記公的個人認証サービスのポータルサイトのSTEP1~4を参考に準備をします.マイナンバーカードと電子証明書を取得し,BluetoothAndroidスマートフォンに接続できる準備ができたら,JPKI利用者ソフトをWindows版をPCに,Androidアプリをスマートフォンにインストールします.

インストールが終わったら,Androidアプリを起動してPC接続→PC接続の開始→マイナンバーカードを読ませたのちに,Windowsソフトから"動作確認"あるいは"自分の証明書"を選択して,マイナンバーカードの情報を読めることを確認しておきます.

続いて,登記・供託オンライン申請システムへの申請者情報登録と,申請用総合ソフトのダウンロード・インストールをします.登記簿謄本がない場合,このシステムの"かんたん請求書請求"で請求ができます.ここで\1,000ほどかかるそうです.
ソフトをインストールしたら起動して,登録したID・パスワードでログインします.


4. 書類の作成

ソフトを起動したら,手引書簡易版の申請情報作成例③【建物の滅失登記編】を見ながら,ソフト上で申請書を入力していきます.主に入力するのは以下です.
  • 添付情報(滅失証明情報の書類名)と解体業者法人番号
  • 申請先登記所
  • 申請人(所有者)の情報と登記識別情報の様式作成
  • 登記完了証の交付方法の選択
  • 物件情報

画面は以下のような感じです.

スクリーンショット_2-2_登記申請書作成_黒塗り

物件や会社の検索は,登記情報をソフト上から検索できるので入力は比較的楽だと思います.物件情報は所在・地番から不動産番号を調べて入力すればよいです.

申請書ができたら,添付ファイルに電子署名を付与して添付します.電子署名のつけ方にはAdobe AcrobatのPDF署名プラグインを使うか,申請用ソフトから署名付きPDFフォルダを作成するか,の2通りあります.

 Adobe Acrobatは有償版(StandardかPro)がないとPDF署名プラグインが動かないので,お金をかけずに済ますなら署名付きPDFフォルダを作るほうがいいです.これは,PDF文書を食わせると,電子署名の記載されたXMLと元のPDFセットになったフォルダを作ってくれる機能で,申請用ソフト上で使えます.

電子署名をつける際には,Androidスマートフォンを動作確認時と同様に,PC接続にしてマイナンバーカードにかざした状態にして置き,申請用ソフトからマイナンバーカードの電子証明書用パスワードを入力してICカードリーダーにアクセスさせます.これで,電子署名をつけてくれます.

電子署名ICカードリーダーへのアクセスに失敗した,と出る場合には,Androidアプリのトップまで戻るかアプリ再起動してやり直すと割とうまくいくことが多いです.Androidスマートフォン(orBluetoothドングル?)は,ICカードリーダーよりは不安定な気がします.

署名付きPDFフォルダが作成できたら申請書に添付します.添付書類も全てつけ終わったら,申請自体に電子署名をつけて,送信すると法務局に送信されます.

これで無事滅失登記の申請ができました.補正が必要な場合は法務局から連絡があるのでそれを見るほか,書面の提出がやっぱり必要となれば持っていく必要があります.最終的に登記完了証が交付されれば終わりです.

5. 注意点

  • オンライン登記は,登記・供託オンライン申請システムを使うのですが,平日8:30~21:00しか申請できないという制限があります.申請書の作成自体はオフラインでもできるものの,肝心の申請が平日しかできないので,注意する必要があります.
  • 私の場合,完全オンラインで手続き完了,とはいかず,一度法務局に行く必要がありました.理由としては,解体業者から発行してもらった解体証明書が紙面の場合,電子申請で送付した紙面が本物かどうか確認する必要があるから,だそうです.完全オンラインで行うためには解体業者から電子的な解体証明書をもらう必要があったようで,解体業者に発行形態を指定して解体証明書作成を依頼しないといけませんでした.

感想

登記を実際にオンライン申請してみて思ったこととしては,現状のままではオンラインの意味があまりないということでした.オンラインサービスというのは”いつでもどこでも”使えるという利便性を得るためのもののはずなのですが,申請時間が制限されており"いつでも"という利便性が削られているうえ,最終的に紙書類の確認をするとなるとオンラインの意味がさらになくなります.現状は紙で申請したほうが簡単で早いです.
オンラインのほうが便利という状況でないと,インセンティブなしではだれもそれを使おうとはせず,古い申請フローを使い続けるでしょう.実際,今回伺った法務局の窓口の方も,オンラインの申請はかなり珍しいという言い方をされていました.もう少しオンラインに寄せた整備がされることを期待します.特に以下の点が解消されれば,オンラインを使う人も増えると思います.

  • 紙に比べて手間が多い点.電子の場合,紙ならそのまま出せばよかった書類をPDFにしなければならないうえ,電子署名をつけるという手間が増えています.書類作成元と送信者が正しいことの証明が必要なので,添付書類・送信にそれぞれ電子署名をつける必要があるのは理解できるのですが,もう少し容易につけられるようにしてほしいです.また,Webでは完結せず独自ツールのインストールが必要であり,ツール自体もこなれていません.ここも手続きの手間・時間がかかる要因だと思います.
  • 初見ではわかりにくい仕組み・ツールである点.司法書士などが必要とされる理由だと思うのですが,登記まわりの仕組みと用語などが独特で理解するのに結構時間がかかりました.日常的に申請をする人はいいかもしれませんが,新規に申請を行う個人でも容易にできるよう,仕組み自体の整理とツール・UIの改善やヘルプの充実化をしてほしいなと思います.これをやると司法書士土地家屋調査士など食いっぱぐれる人が出てくるので反発されそうな気もしますが,行政の単なる事務手続きに無駄に労力かけるような状況は今後どんどん無くしていかないといけないと思います.

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