一条工務店i-smileの省エネ性能を評価する (1) 建築物省エネ法における評価プログラムの計算とBEI


この辺の記事で記載していましたが,一条工務店のi-smileという商品で家を建てています.
i-smileはi-smartなどの商品よりも省エネ性が劣るものの,高気密高断熱で大容量太陽光パネル+蓄電池を搭載する省エネ性能の高い商品になります.自分の家が実力としてどの程度の省エネ性能を持つか評価するために,自分でBEIを計算してみました.

BEIはBuilding Energy-efficiency Indexの略で,建物の設計時の消費エネルギー性能を示す値です.1=100%を同程度の規模の一般的な建物の消費エネルギー基準値として,これに対してどの程度省エネかを表します.
例えばBEI=0.5なら,基準値に対して50%省エネ,BEI=0なら100%省エネ=『ZEH』(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)ということになります.

BEIの計算には,国土交通省建築研究所などが開発している建築物省エネ法に基づくエネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)を使うことができます.ここで,計算対象の住宅の外皮性能や住宅設備の情報を入力するとBEIの計算結果が得られます.
エネルギー消費性能計算プログラム住宅版TOP
今回はこの計算の入力値と計算結果をご紹介します.ちなみに,計算結果は仮定をおいた値での計算としているため,参考値と考えください.ただざっくりした値としては合っていると思います.おかしな入力があればツッコミ頂けると助かります.

1. 計算結果

早速ですが,計算結果を記載します.以下のツイートから外皮計算を少し修正したので変わって,

  • Ua値0.34
  • BEI=0.24=76%省エネ
という結果でした.BEI=0.25以下なのでNearly ZEHになり,広い意味でのZEHには該当することになるのが確認できました.

エネルギー消費性能計算結果5

BEIは一次エネルギー消費量で計算されます.一次エネルギーは,自然界で得られる加工されていないエネルギーのことで,石油・石炭・天然ガス,太陽熱などが該当します.一方,実際に消費するエネルギーは二次エネルギーと言って,加工後の電力・ガスなどのエネルギーになります.エネルギーの種類によって一次→二次の加工効率が異なるので,省エネ度合いは二次エネルギー消費量を一次エネルギー消費量に換算して比較されます.

また,BEIは,暖房・冷凍・換気・給湯・照明と発電設備の6設備で評価されます.その他の設備はコンセントから使う機器などですが,この利用は使用者によってさまざまなので基準外になっています.上の表だとその他の設備を除いた一次エネルギー消費量が基準値81.9GJに対して消費35.7GJ-発電16.6GJ=19.0GJとなり,BEI=0.24(76%省エネ)となっています.

以降ではどのような入力をしてこの値を算出したか,プログラムのタブ毎に記載します.

2. 基本情報

ここでは,床面積や地域区分を入力します.床面積は,「主たる居室」=LDKと,寝室・子供室など=「その他の居室」,トイレ・風呂・洗面所・廊下などを含んだ合計面積の3つを入力する必要があります.私の家は延床32坪≒105.8㎡なのでそれを入力しました.居室面積は壁芯面積を記載しました.
横浜市は6地域,日射区分はA4(年間の日射量が多い地域)に該当するのでそれを入力しました.地域は計算プログラムHPに「地域の区分・年間の日射地域区分・暖房期の日射地域区分検索ツール」というExcelシートがありますのでこれで検索できます.

3. 外皮

外皮性能は,先に述べた通りUa値0.34W/㎡Kとして入力しました.この計算は計算プログラムと同じHPに,住宅・住戸の外皮性能の計算プログラムと,住宅・住戸の外皮性能計算条件入力シートというExcelシートが公開されているので,そちらで計算しました.計算内容は別途記事にしようと思います.
住戸種類は床断熱になります.浴室部分は上棟の際に見学したところ基礎部分に断熱していたので,基礎断熱にしました.通風・蓄熱・床下換気は「評価しない」を選択しました.

4. 暖房

i-smileは全館床暖房になります.プログラム上の入力としては,温水床暖房で敷設率100%,熱源を電気ヒートポンプ(フロン系冷媒)としました.敷設率は居室内の敷設面積を示しています.i-smileだと廊下・風呂などにも床暖房があるのですが,それは入力できていません.100%以上にすると100が上限だというエラーが出たので,そもそも居室以外にも床暖房を入れることが考慮されていなさそうです.
ちなみに,暖房方式に「住戸全体を暖房する」という入力があるのですが,これはダクト式セントラル空調で全館空調する場合の入力なので,全館床暖房の入力としては使えません.
エネルギー消費性能計算プログラム住宅版(暖房)

5. 冷房

冷房はルームエアコンとしました.冷房はエネルギー消費効率の区分を入力する必要があります.区分を満たす条件は,建築研究所の技術情報HPのエネルギー消費性能の算定方法 第四章 第三節 付録Aに記載があります.採用予定のRAYエアコンおよび設置するエアコンの仕様を調査したところ,区分(い)だったのでこれを入力しました.
冷房のエネルギー消費効率の区分

6. 換気・熱交換

一条工務店のロスガード90の性能を入力します.換気方式は「ダクト式第一種換気」,換気回数は0.5回/hとしました.比消費電力は換気風量当たりの消費電力を示しています.下のブログから仕様を引っ張って68W/180㎥/h=0.38としました.今回採用したのはロスガードうるケアなので比消費電力はこれより悪い可能性がありますが,仮で入れています.

温度交換効率は85%としました.ロスガード90はその名の通り90%の熱交換効率を持つという触れ込みですが,これは暖房の温度交換効率の場合であり冷房の温度交換効率は85%なのでこちらに合わせました.

7. 給湯

三菱電機製のエコキュートを入れていますので,「電気ヒートポンプ給湯機(CO2冷媒)」を入力しました.熱源機の評価方法には,品番を指定する方法とJIS効率を直接入力する方法がありますが,品番リストから三菱電機製品を検索すると風呂熱回収に対応した機種のみが登録されているようで今回採用機種はリストになかったため,直接JIS効率=3.3を入力しました.
配管方式はヘッダー方式で,配管径は13A以下としています.
水栓はすべて2バルブ以外の水栓としました.台所はタッチレス水栓を採用したため,手元止水機能・水優先吐水機能を採用としました.また,浴槽は「高断熱浴槽を使用する」としました.

8. 照明

照明は「すべての機器においてLEDを使用している」としました.また,居室のシーリングライトは基本的に調光可能機種であり,廊下はかってにスイッチを採用したので,調光が可能な制御・人感センサーを「採用する」としました.

9. 太陽光

8.5kWの太陽光パネルを採用しましたので,その値を入力しました.アレイ種類は「結晶シリコン系太陽電池」,アレイ設置方式は「屋根置き形」,設置方位角は真南,パネル設置傾斜角は計算したところ8°程度だったので「10°」で入力しました.パワコンの定格負荷効率は「夢発電システム」の仕様を参照して96%としました.ここはもしかしたら変わっているかもしれません.

10. 注意点

今回の結果(BEI=0.24)は,上記の通りいくつかの仮定をおいて値を入力し計算した結果になっています.さらに,評価対象外である蓄電池などの性能が考慮されていません.そのあたりを含めて考える必要があります.
  • 詳しくは次回記載しますが,熱貫流率の計算元となる値がいくつか仮の値であるため,不正確な可能性があります.ただ,以下の方が掲載してくださっている資料によるとi-smileのUa値はカタログ値で0.32となっていて今回の計算結果とほぼ合致しており,あまり間違った計算ではないと思います.
    【ほんとにスゴイの?】一条工務店が力を入れている【断熱性能】を解説!│旅をする記 
  • 床暖房の敷設率は100%としました.しかし,これは居室の敷設率であり,実際は浴室などにも及んでいるのですがそれが考慮されていません.そのため,暖房の消費エネルギーは低めに出ている可能性があります.
  • 太陽光発電の発電量90GJのうち,自家消費分が17GJとなっており,73GJは売電していることになっています.しかしながら,この計算結果は蓄電池が考慮されておらず,蓄電池への蓄電→夜間使用は無視されています.年間17,179MJということは単純計算すると1日4.7kWhの自家消費ということになりますが,蓄電池は7kWhなので現状の自家消費の1.4倍は蓄電できる計算になります.この分の夜間エネルギー消費も太陽光発電で賄われたとすると,BEI=-0.04となり,104%省エネとなって『ZEH』レベルの性能があると考えられます.
  • 消費エネルギーにガスが含まれていますが,今回建てるi-smileはオール電化なので,その差も考慮されていません.昼間のガス→電気による自家消費の増加やガス・電気による一次エネルギーとの換算係数の差などがあると思います.
  • 蓄電池を考慮してもまだPV発電量のうち50%は売電している計算になります.HP給湯も昼間にお湯を沸かしておけばさらに省エネになりますが,そういった運用の違いは考慮されていません.

次回は,外皮平均熱貫流Ua値の計算根拠について記載しようと思います.

次回:
 一条工務店i-smileの省エネ性能を評価する (2) 外皮平均熱貫流率Ua値の計算