SPXLへの投資方法の検討(2) SPXLの30年価格推移と初期投資+積立投資時のリターンの分析

前回の記事では,分析の目的を説明しました.
また,SPXLの仮想長期データを作成し,ある程度妥当なデータが得られることを確認しました.

今回は,(a)SPXLの仮想長期データによる30年間の価格推移を見てみます.
また,(b)前回提示した積立投資条件で投資した場合の,リスクとリターンを分析します.
・種銭(他の株式からの移行分)は500万円
・今後30年間追加投資が可能であるとする
  - 毎月末10万円,ボーナス月(年2回)の15日に20万円
  - 初回に500万円を投資,その後は追加投資可能なタイミングですべて投資

(a)SPXLの30年間の価格推移

前回作成したSPXLの仮想長期データ(1954/1/4~2021/4/28)を,以下のように30年ごとに分割します.
(1954/1/4~1984/1/4, 1954/1/5~1984/1/5, ... , 1991/4/28~2021/4/28)

9407個の30年間データが得られましたので,その価格推移のうち,上位5%(95パーセンタイル),中央値(50パーセンタイル),下位5%(5パーセンタイル)の推移を見てみます.

SPXL_30y_5parcentile.png
前回同様,縦軸を対数とします.また,開始日の基準価格を1$として正規化しました.
上位5%では30年の運用で100倍に近い価格に,中央値でも21倍になる事がわかります.一方,下位5%の場合でも30年で10倍近くの価格にはなりますが,運用途中で実に18年もの間は投資開始時の価格を下回り,最低だと投資開始の41%ほどの価格となってしまいます.

比較として,仮想インデックス(S&P 500配当込み指数)も同様に30年間データの推移を見てみます.
SP500_30y_5parcentile.png
上位5%では29倍,中央値で15.8倍,下位5%でも10.8倍となります.下位5%では30年後の価格はSPXLとほとんど変わらないうえ,運用途中で投資開始時価格を下回るのはせいぜい3.5年程度と安定しています.こうして比較すると,SPXLのハイリスク・ハイリターンぶりが際立ちます.

SPXLのリスクをうまく抑制しつつ,リターンを得られる運用をしたいところです.

(b)積立投資時のリスクとリターンを分析

(a)で示した30年の価格推移をもとに,初回に500万円を投資,その後は毎月末10万円,ボーナス月(年2回6月,12月)の15日に20万円の投資を30年間継続,という条件で資産がどのように推移するかを計算しました.30年後の総投資額は5300万円となります.
計算の前提として,投資額をあまりなく全額投資できるものとしました.また為替の影響は考慮していません.

SPXLを上記の条件で購入したときの資産残高の上位5%,中央値,下位5%を見ると以下のようになります.
SPXL_30y_5parcentile_assets.png

例によって縦軸が対数であるためわかりにくいですが,500万円(10^2.7)からスタートし,30年後には以下のようにどのパターンでも投資額を上回る結果が得られています.
 上位5% 38億2,094万円(72.1倍)
 中央値     4億4,846万円(8.46倍)
 下位5%   2億122万円(3.8倍) 
下位5%を見ると,投資額に対する下落率は59%→47.4%と多少ましになりますが,一方で20年という依然として長い期間投資額を下回っています.そして,どの結果でも30年後のリターンが初期に全額投資した場合よりは下がってしまうことから,多少リスクを低減はできるもののリターンも低下することがわかります.

同様に,仮想インデックスを購入したときの資産残高を見てみます.
SP500_30y_5parcentile_assets.png
下記の様な結果で,いずれのケースでも2.5年もすれば投資額を上回り,30年後には4倍以上の資産額となりました.
 上位5% 7億1,917万円(13.6倍)
 中央値   3億2,728万円(6.2倍)
 下位5% 2億3,635万円(4.5倍) 
特に仮想インデックス下位5%ではSPXLの下位5%を上回っており,十分安定しているどころか,価格が下落したり同程度で長く推移する期間があると,SPXLよりも仮想インデックスのほうが良い結果を残せる可能性すらあることがわかりました.


今回は,結果として,先人たちの分析と同様の,以下の結果が得られました.
・SPXLでは可能なら15~20年程度継続して運用を続ける前提で購入すべき
・初期投資+積立投資ではリスクを多少低減できるものの,リターンも低下するうえ運用期間を短くすることはできない

今後は,別の積立投資方法およびリバランスについて,分析してみたいと思います.