最近米国株が大きく下げています.過去にもこのような暴落があったのか調査してみました.
1. 過去150年のS&P500指数の推移
S&P500指数の長期データ(約150年分)をグラフにプロットしてみました.出所は以下です.
価格変動が大きいので縦軸は対数グラフとしています.
こう見ると,下落相場だった時期もありつつ,長期的には上がっているように見えます.
それでは,具体的にどの程度の期間下げ相場が続いたことがあったりしたのでしょうか.
2. 過去の代表的な下げ相場
過去代表的な下げ相場の発生時期と,その継続期間・下げ幅を見ていきます.
こちらは多いんですが計10個あります.名称は正確ではないかもしれません.適切なものがあれば教えてください.
詳細な(1日)データを使うために一部のデータは米国のYahoo! financeから取得しました.
なお,継続期間は,暴落の直近高値を回復するまでの期間,としています.
最近の下げ相場というとまずこれを思い浮かべると思います.
(コロナショックは直近すぎて除外)
2007年から下落が始まり,回復したのは2012年です.
②ITバブル崩壊
これもまだ記憶に新しいと思います.2000年ごろから始まり,2007年まで株価が戻っていません.
このあたりから古すぎてもう歴史としてしか知りません.1987年10月19日に,1日の史上最大の下落幅を記録した日です.
米国の赤字とドル安に伴うインフレ懸念が原因とのこと.
これも歴史の授業で出てきました.1973年,79年の2回のオイルショックがあったようです.
しかし2回目の下落幅はそこまでではなく,S&P500としては比較的すぐ回復しているようです.
⑤コングロ・ブーム崩壊
名前は「ウォール街のランダム・ウォーカー」から引っ張ってきました.
1970年の株価下落ですが比較的すぐ回復しています.
⑥トロニクス・ブーム崩壊
こちらも「ウォール街のランダム・ウォーカー」より.
1962年に株価が下落しています.⑤よりは期間が長いものの,下落幅はそこまで大きくありません.
⑦世界恐慌回復期の調整局面
入れるか迷いましたが,40~80年前のうち長期間の下げ相場ということで入れました.
世界恐慌から回復しつつある1946年に株価下落があり,そこから約4年株価が戻らなかった時期です.
⑧世界恐慌
世界恐慌の前にも小幅な恐慌がいくつか発生していたようで,この期間は長期に株価が戻っていませんでした.
戦後インフレ,投機的投資万円,大火,銀貨の貨幣鋳造停止,馬インフルエンザ流行など,複数の要因があって発生したとのこと.
ここまで挙げた10の暴落をまとめたのが以下の表です.
参考:こちらにも類似のデータがありました.
投資のデータ集:過去95年の市場暴落と回復年数 - myINDEX
投資のデータ集:過去95年の市場暴落と回復年数 - myINDEX
3. 世界恐慌時期の相場と配当再投資+積立
過去の代表的な下げ相場を見ると,やはり世界恐慌時期が最も下落幅・回復期間ともに長期にわたることがわかります.
この期間に投資をやめると確かにその期間資産が回復しない,ということになりますが,積立投資を続けていれば結果が変わることが予想できます.
ここでは,配当(分配金)を再投資しつつ,積立投資を続けた場合の資産推移と回復期間を見てみます.
まず,世界恐慌時期に,分配金を考慮した指数はどうであったか,その推移を見てみます.
恐慌前のピークをたたいた1929年9月の半年前に高値掴みしたと想定し,そこから1年毎に分配金を受け取り,全額再投資したと仮定します.分配金には20%の税金がかかったとします.この場合,推移は以下のようになりました.
たとえ高値掴みしてその後資産残高下落に見舞われても,元本割れの期間は25年→16年で済みます.
これだけでも,暴落の印象がかなり違ってきます.
さらに,積立投資した場合を考えます.仮に1929年9月に半額を保有しており,その後10年間かけて同額を積み立て購入した場合を想定します.分配金は先ほどと同じように再投資します.
これらの場合推移はさらに以下のように変化します.
高値掴みしているので,70%資産が一時的に下落しますが,積立投資を続けることで回復期間は6年まで短縮され,その後も資産を単に保有し続ける・配当再投資するだけよりも増加することがわかりました.
ここからわかることは,たとえ世界恐慌レベルの暴落や長期間の下落・停滞相場だったとしても,配当再投資+積立投資を組み合わせることで,劇的に資産残高の減少や回復期間を小さく抑え,その後の利益を得られるようになることです.
相場が上がるか下がるか,予想することはできても必ずぴたりと当てるのは(本業ではない素人には)不可能に近いことなので,長期間たとえ下落してもそのまま維持し続けられる範囲の投資額なのであれば,暴落が発生しても積立投資をし続ける戦略が有効と考えます.