SPXLへの投資方法の検討(1) SPXLの仮想長期データの準備

これまで,私は国内株式を主として投資をしてきました.素人なりに,以下のような銘柄の選定方法をとって,それなりに利益は得ることができていました.
配当利回りが高いこと
・有用な株主優待があること
・株価が割安でありある程度株価上昇が見込めること

最近はより安定した投資先としてインデックス投資,特にSPDR S&P 500に連動した日本の上場投資信託(ETF)であるSPDR S&P500 ETF(1557.T)の割合を増やしています.
この理由は,
・通常の国内株と同様に売買できること
・信託報酬が低い(0.1%程度)こと
インカムゲインが高いこと
・分配金利回りもそれなり(1.52%)であること
などです.

ただ,米国株式市場やS&P 500などの指標について調べたりするうちに,
インカムゲインをもう少し重要視したほうがいいのではないかと考え始めています.
そこで注目しているのがSPXLです.

SPXLは正式にはDirexion Daily S&P 500 Bull 3X Sharesという名称で,S&P 500の3倍の日次投資成果を目指すレバレッジのかかったETFです.3倍の値動きになりますので,3倍値上がりすることもあれば,逆に3倍値下がりすることもあり,リターン・リスクが大きいETFになります.

私は,当分は働きながら追加投資を続ける予定ですので,ある程度のリスクを許容してもリターンの大きい商品をポートフォリオに入れるのは妥当だと思っています.

SPXLについて調べると,株式投資をしているブログで様々な意見を見かけます.リスクや運用コストが高く,危険な投資商品だという声もあれば,以下の記事では,積立などでの長期運用することで,確率高く大きなリターンが見込めるとしています.

このあたりの記事は非常に参考になるものの,やはり自分の想定する運用条件で分析をして,納得した上で投資したいと思い,分析してみることにしました.

分析の内容と目的

想定としては,現在国内株式および1557.Tに投資している分を一部売却して,SPXLを購入し,かつこれから購入する分にSPXLを含むという条件です.ここではわかりやすく以下の条件とします.
・種銭(他の株式からの移行分)は500万円
・今後30年間追加投資が可能であるとする
  - 毎月末10万円,ボーナス月(年2回)の15日に20万円
  - 30年間の総投資額は(10万円×12ヶ月+20万円×2回)×30年+500万円=5300万円

この投資金額を,様々な運用ケースで投資した場合の年次のリターンとリスクの確率を,長期データから計算します.運用ケースとしては以下のようなものを想定します.
  - 初回に500万円を投資,その後は追加投資可能なタイミングですべて投資
  - 週に一度(金曜日)に一定額積立投資,種銭は1年で使い切る
  - 月初めに1度一定額積立投資,種銭は1年で使い切る
  - 年初に一度積立投資,種銭は1年で使い切る
  - 投資可能タイミング全額投資するが,現金とリバランス(SPXL:現金を7:3あるいは5:5とする)

この結果から,SPXLによってどの程度収益を得られるか,複数ケースのうちどのケースが最もよい運用であるかを明らかにします.

SPXLの仮想長期データの準備

上記の分析をしたいのですが,SPXLは2008年に設定されたETFであるため,それ以前のデータがなく,最長13年分のシミュレーションしかできません.なるべくデータを増やしてリターンを計算すべく,より古くから運用されているS&P500の価格からSPXLの仮想データを用意する方法を考えます.
具体的には,上記のかきすけさんのnoteで言及されている,以下の式を追試してみて,正しければそれを使うことにします.

SPXLの1日の値動き
=S&P500配当抜きの1日の値動き×3+{(配当利回り×3)-(米国3か月債金利×2)×1/365}-(年率2.15%の固定コスト)

各データは以下より取得します.米国3ヶ月債は1954年以降の分が入手できたので,S&P 500もそれに合わせます.SPXLは設定日2008年以降の分とします.

まずは,シンプルにS&P500の値動きを3倍し,0.95%のコストを上乗せしてみます.
SPXL_dif_rate3_c095.pngSPXL_err.png
想定通り,SPXLよりも高い値となり,誤差が最大30%程度発生しました.
前述のnote記事とは誤差の形状がちょっと違うのが気になります.2009/11頃にSPXLが,2017/12頃にS&P500が急変していることによる乖離のようなのですが,データソースが違うのでしょうか.まあ,最終的な乖離が±10%以内程度になっていればよいことにしましょう.

次に,先物の値動きに対する短期金利として米国3ヶ月債権利回りおよび固定コスト2.15%を追加してみます.
SPXL_dif_rate3_dtb3_c215.png
SPXL_err_c215.png
先程より誤差は低減しましたが,まだ残っているように見えます.データソースの差でしょうか.
固定コストを増やせばもう少し乖離を減らせそうです.1%増やして,3.15%としてみます.

SPXL_dif_rate3_dtb3_c315.pngSPXL_err4.png

先程よりは合致したように見えます.実際のSPXLの値動きとは概ね±10%以内となりましたので,突き詰めるのはこの辺にしておき,以下の式で過去(1954/1/4以降)のSPXLを模擬できるものとします.

SPXLの1日の値動き
=S&P500配当抜きの1日の値動き×3+{(配当利回り×3)-(米国3か月債金利×2)×1/365}-(年率3.15%の固定コスト)

実際にSPXLを1954年1月4日の価格をS&P 500と同一として再現したのが,以下のデータです.
ここで,比較対象とする仮想インデックスは,先のnote同様S&P500配当込み指数に0.141%の固定コストを考慮した値とします.
期間が長く値動きが激しいので,縦軸は対数軸としました.

SP500_SPXL_1954.png

先のnoteで計算された1954/7/1から2020/7/1までのトータルリターンは
仮想インデックスの全期間リターン 318.6倍
SPXLの全期間リターン 1970.2倍
とのことでした.

再現データで計算すると,
仮想インデックスの全期間リターン 391.1倍
SPXLの全期間リターン 1891.7倍
であり,概ねそれっぽいデータが作成できたのではないかと思います.

次回以降,このデータを用いて分析をしてみます.