一条工務店i-smileで家を建てる (3) 家のメンテナンスコストと太陽光発電・光熱費削減効果

この記事の続きです.

予算算定にライフプランシミュレーションを使った,という話をしました.
ここでは,どのようにシミュレーションしたかを何回かに分けて記載します.

家づくりにあたっていくつか本を読んでいたところ,目安金額の算出方法が記載されているものがありました.例えば以下のように,年間のローン返済に充てられる金額から借りてよい住宅ローン費用を算出し,頭金を含めて購入可能なマイホーム金額を算出する,というものです.
借りてよい住宅ローン金額=(現在の手取り収入ー年間生活費ー年間貯蓄金額ー金利分)×返済年数
マイホーム予算=頭金+住宅ローン金額
(簡単化して書いてますが,実際はもう少しちゃんとした算出式が載ってます.)
参考:小野信一, "最新 失敗しない!後悔しない!マイホームの建て方・買い方", 西東社, pp. 44-45, 2018



ところが,これでは現在の年間の収入・生活費しか考慮しておらず,その将来の変動について考慮されていません.また,家に使う予算はこれで算定できるものの,そのうち家のメンテナンス費用などが考慮されていません.さらに家の購入にあたっては引っ越し費用や保険,ローン手数料,登記費用など様々なお金がかかってきます.この辺りも考慮して金額を定めたいと思っていました.

本記事では,まず一条工務店の建物を建てた場合のメンテナンスコストと,太陽光発電および断熱性・気密性による光熱費削減効果を考えてみます.ちなみに,家も自分も寿命が残り60年だとして,60年後には土地の価格で家を廃棄してもらうものと考えます.つまり,61年目以降に発生するコストは考慮しない,という意味です.

メンテナンス費用の算出


ハウスメーカーの売り文句には,メンテナンス費用が安い,と謳われることがあります.しかしこれは本当でしょうか.
以下の記事を見てみると,メンテナンス・修繕にかかる費用には設備に関する部分も多く,家自体の費用割合はそこまで大きくないことがわかります.


1つめの調査結果を見ると,平均築36.8年で532万ほど修繕費がかかっています.60年分でみると,867万ほどかかる計算になります.

もう少しちゃんと計算してみましょう.修繕費用の調査結果では,以下のような費用がかかっていたようでした.home_maintenance.png
"修繕経験者の割合"ということなので,築30年でも修繕していない人もいるようです.ここで,修繕経験割合を修繕の発生割合と仮定し,修繕発生割合と修繕1回の費用実績値の積が修繕1回費用の期待値を示すものと考えました.また,修繕回数は30年間の回数とし,寿命60年までにはその倍(切り捨て)の回数発生するものとしました.

期待値と寿命までかかる修繕回数をかけるたのが以下の表です.60年間トータルでは1,049万円の修繕費用が掛かる計算になります.根拠とした数値は築30~50年のものが混じっているので高めに出ていますが,このくらいのコストがかかるものと考えればよさそうです.

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一方,一条工務店で建築した場合はどうでしょうか.
外壁についてですが,一条工務店では,全面タイル張りを押し出しており,60年間のコストは68万円だと謡っています.相当安めの見積もりだと思います.まあタイル自体はメンテナンスコストは低めであることは確かだと思うので,100万円くらいだとここでは思っておきます.

屋根については,i-smileは屋根が太陽光パネルになっており,パワーコンディショナ,蓄電池が付属します.通常の屋根のようなメンテナンスは必要ないものの,パワコン・蓄電池,パネルの維持費がかかります.もちろん発電によるメリットはありますが今は置いておきます.

維持費用はこの辺のサイトを参照し,パワコン15万・蓄電池60万を15年毎に交換するとして225万,5万円のメンテナンスが5年に1回発生するとして55万,60年で1回はすべてのパネルを入れ替えるとしてパネル交換費用をざっくり150万円とすると,計430万円ほどかかることになります.

それから,給湯器も通常のガス給湯ではなくヒートポンプ給湯器(エコキュート)になるので,修繕費用が上がると思われます.1回の修繕費用をここでは55万円と想定しました.

一方,シロアリについては,一条の家は木材に防蟻処理を施してあることから通常の家より発生確率は低いと思われますので,発生割合を半減として期待値を見積もります.

さらに,修繕の調査では含まれていませんが,一条工務店の空調・換気(床暖房,エアコン,全熱交換換気=ロスガード90)も費用が必要です.しかし,エアコン費用は生活費(家電)として考慮していたので,家のライフサイクルコストとしては,生活費(家電)との差分がどれだけ発生するかを考えてみます.

エアコンのみの場合,1台当たり平均10万円で5台設置し10年サイクルで買い替えすると,60年で250万円です.また3年に1回メンテナンスとして1台2万円でクリーニングすることを考えると,190万円で,合計440万円かかります.

一方ロスガードのメンテナンス費用は本体25万×5回+熱交換器8万×3回+ダクト25万×1回で174万円となります.また床暖房は,夏季エアコン兼用の熱源機25万円を10年毎に買い替え,水(不凍液)を10年毎に5万で交換,配管を50年目に40万で全交換とすると,190万円です.さらにエアコンは夏季エアコン兼用の1台を除いた4台について上記と同様の設置・メンテナンス費用がかかります.これが352万円なので,合計716万円となります.通常のエアコンのみとの差分は276万円です.

これらをまとめると以下の表のようになります.トータルメンテナンス費用は60年間で1,440万円と,通常の家より高くかかることが見込まれます.

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光熱費削減効果

光熱費はいろんなブログを見たりしていると,延床面積30坪~33坪くらいの家庭では,太陽光発電だけ搭載する家で年間光熱費が12万円(月々1万円)程度,蓄電池も搭載している家庭はそれより安く年間10万円程度かそれ以下くらいになるようです.

i-smileだと他の事例(i-cube, i-smart)と比較すると断熱性がやや悪いことが考えられるので,蓄電池付きでも光熱費は年間12万円ほどまでしか下がらないと想定します.我が家は年間20万円光熱費がかかっているので年間8万円削減が見込めます.

ただし初年度はこのくらいの性能があるものの,年々断熱材などは劣化していきますので,年1%ずつ削減効果が低下すると考えると,60年間で360万円ほどの削減になります.

太陽光発電量の売電収入の予測

太陽光発電については,一条工務店の営業さんにお願いすると,想定容量での発電量・売電量・自家消費メリットをシミュレーションしてくれます.この結果が参考になります.

パネル容量10kW,蓄電池7kWh,30坪のi-smileの想定だと,売電収入だけでいうと当初10年は毎月12000円弱,その後30年目までは毎月6000円弱でした.売電価格は当初10年17円/kWh,固定買取期間終了後は11円/kWhという条件になっています.

しかし,このシミュレーションでは甘い見積もりになっている条件が多々ありますので,修正すべきところがあります.
まず修正すべきは,発電量です.毎年必ずフルの発電量が期待できるとも限らないので,9割くらいの発電量としておいたほうがよいでしょう.さらに年によってこれも1%ずつ出力性能が下がると考えます.太陽光パネルは30年目に総入れ替えするとして,出力性能劣化は戻って,また毎年1%ずつ下がると考えます.

それから,売電価格です.これは年々低下しており,2014年→2022年の8年で37円から17円と半分以下になりました.今後も太陽光発電の割合が増えることとから,同様のペースで低下すると考えます.さらに,10年の固定買取期間終了後の価格も低下しています.現状8円くらいのところ,下手すると1円未満まで低下する可能性もあります.むしろこれから太陽光パネルの載った家が増えるでしょうから,これだけ低下するの可能性は大いにあるでしょう.

そこで,以下のように考えます.
・当初10年は2023年の予測値15円/kWhでなるべく発電したものを売電する.
・11年目~60年目はほとんど自家消費で光熱費削減に使い余剰電力を売電する.売電単価は現在の8円から指数関数的に0円に漸近しながら低下したと考え,11年目~60年目を計算する

すると,売電収入は60年間で128万円ほどにしかならない,という結果になりました.

まとめ

メンテナンス費用と太陽光発電の売電・光熱費削減のトータルとしては,952万円かかる計算で,通常の家とトントンくらいの価格になると計算しました.

こう見ると太陽光発電の売電はあまり期待できない一方,光熱費削減効果は長い目で見るとかなり効果があるので,10年目以降はどうにか自家消費するような使い方にもっていかないといけないことがわかりました.このためには蓄電池・エコキュートはあるとかなり有用な設備な気がします.

今回の計算結果を用いて,建物ライフサイクルのコストを計算し,それをもとにライフプランシミュレーションを組み立てていきます.

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