この記事の続きです.
家のライフサイクルコストが算出できたので,これをもとにライフプランのシミュレーションをしていきます.といってもこれも要素がかなり多いので,家を建てる前にとっととやっておくほうがいいと思います.
ライフプランシミュレーションとは,将来こうありたいという生活像に対して,その生活がどの程度実現可能か,毎年の収支の積み上げを計算しシミュレーションすることで,生活設計をすることを言います.
ライフプランシミュレーションをお手軽に行う方法としては,例えば金融庁の以下のHPがあります.ここではいくつかの質問に回答すれば毎年の収支と貯蓄のシミュレーションをすることができます.
しかしながら,こういったシミュレーションでは細かな調整はできませんし,もちろん家のライフサイクルコストも考慮できません.そこで,以下のようなExcelシートを作成しシミュレーションするとともに,家にかけられる予算上限の見積もりなどをするのがいいです.
Excelシートには計算例を記載しています.かなり雑なのですが,こういった計算をする,というイメージがわかるかと思います.
数値は以下のような仮定をおいて計算したものです.
- 2022年で30歳,翌年に家を購入する.家の価格は前回記事のライフサイクルコスト計算結果に基づく
- 収入は2022年の中央値(夫530万円,妻290万円(*))で生涯変化なしとしその手取りを見込む.定年時に夫500万妻270万の退職金がある.65歳までは現役の収入半減で働き続ける.年金は65歳から受け取りとし,多少少なめに見積もる.
(*)【2022年最新】日本の年収の中央値は?年齢・雇用形態・業種別でも解説 - 30歳時点で夫婦合計で1000万の貯金があり,これと毎年の貯蓄のうち半分は投資に回し,年3%の収入がある.
- 子供は1人,教育費は合計1770万かかる.
- 生活費に月20万,その他家電に平均年20万,車は10年に1回200万円のものを買い替える.旅行に年1回行く.
計算の方法としては単純で,収入・支出それぞれ費目に分けて年毎に積み上げて計算する,というものになります.
1. 収入
2. 支出
- 生活費:現状の生活費をベースに考えます.子供が大きくなった際に増加するなど考慮します.
- 住宅費・住宅維持費:これは前回記事の家のライフサイクルコストシミュレーションで計算した金額を入れます.
- 耐久消費財:車・家電など5~10年単位で買い替えるものの費用を考慮します.車を使わないのであればその分は減らします.
- 旅行など大型出費:私はわりと旅行が好きなのでその分を見込みます.国内旅行はもちろん,最近は予防接種をしておけば海外にも容易に行けるようにはなってきましたが,為替とインフレの影響でかなりお金がかかりますから,キチンと見込んだほうがいいです.それと,冠婚葬祭費用なども多少見込んでおきます.
- 教育費:子供がいると大きな出費です.どういう進路をとるかで大きく変動しますし,子供のことを考えると避けられない項目です.例えば以下に教育費の例がありますが,幼稚園~大学まですべて公立だと759万円ですむものの,すべて私立となると2200万円かかるということになります.さらにこれも計算例であって,保育園だと高いとか塾の費用とかは考慮されてないので,その分も見込みます.
価格.com - 子どもの教育費っていくらかかるの?子育てにかかる費用を解説 | 学資保険の選び方 | 見直し、相談、比較
これらを年毎に計算して収支をとり,残りを黒字なら貯蓄・赤字なら支出として積算していけば,将来的にお金が無くなる=実現不可能なレベルの支出かどうかがわかります.
ちなみに,上記のExcelでは共働き子一人の想定ですが,退職(65歳)の段階で2500万円程度の貯蓄であり,大体88歳くらいで貯金が尽きる,という結果になりました.子供二人になると当然貯金が尽きるのが早まります.年収中央値の共働きでこれですから,そりゃ少子化も進むってものです.
3. 考慮していないもの
さらに,上記では考慮していない要素があります.
- インフレリスク:以下の文献によれば,一応日本でも1988年くらいから平均すると年率0.5%くらいの物価上昇があります.日銀は年率2%を目標としているようですし,昨今のインフレ状況を踏まえると2%に近い上昇があってもおかしくありません.これを試算結果に追加で見込む必要があります.
消費者物価指数半世紀の推移とその課題 - 年金減額リスク:国民年金支給額は最近でいうと物価上昇に伴いやや上がっている状況ですが,厚生年金についてはむしろ国民年金の不足分を賄う側に使われてしまっているようです.将来的に年金支払者も減りますし,支給開始年齢がさらに後ろ倒しされるかもしれません.30年も先のことですし少なめに見積もっておくほうがよいです.
- 収入低減リスク :将来体調が悪くなったり会社が不景気でボーナスが減る・倒産することもあるでしょう.たとえダブルインカムだとしても,片方の収入の半分は余裕としてみておいたほうがいいかもしれません.
- 副業などの収入:最近は副業も増えてきているので,その収入も考慮してもいいです.収入低減リスクを賄ういい方法です.しかし副業は本業に比べて不安定なことが多いので,もし副業があっても多くは見込まないほうがいいかもしれません.
- 介護費用:親の介護,自分の介護を考えておくべきです.介護保険で賄える範囲であればいいのですが,最近では施設も入所待ちが続いていることもあるといいます.その場合訪問型など高価なサービスが必要かもしれません.親の介護は親の資産で賄えるのか,確認しておきます.
- 児童手当などの手当て:子供が中学生までは\10,000~\15,000の手当てが毎月もらえます.フルであれば総額200万近くもらえますが,所得限度を超えると\5,000/月まで下がり,上限を超えると無くなってしまいます.
- 太陽光発電売電収入:以前の試算では,60年で128万円ほどでした.これは多少厳しい見積もりにしたので,そのまま見ておきます.
この辺を必要に応じて見込むことでより正確なシミュレーションをします.
4. ライフプランシミュレーション結果のメンテナンスと予実管理
ライフプランシミュレーションを行い,家を購入しても生活が成り立つか目安が分かります.しかし,重要なのはライフプランシミュレーションによる費用見積もりだけではなくて,その後の予実管理もです.
ここで計算した内容はあくまで現状の想定のもと計算した結果に過ぎず,実際には収入も支出も毎年変化があるのですから,あまりに細かく記載してもやりすぎになってしまいます.
毎年の収入と支出を把握し,シミュレーションよりも余裕があるか・使いすぎていないか確認し,考慮し忘れていた要素があれば再シミュレーションをして,生活を見直す,という作業によって,理想の生活の実現というのが達成できると考えます.
実は私はこのライフプランシミュレーションを3年ほど前にすでに作成しており,年1回の実績記入をしています.定期的にメンテナンスすることで余力もわかりますし,今回のように家を建てようという場合もすぐ予算規模などを現実的なラインで見積もることができました.これは家を建てたあとも継続していこうと思います.
次回はi-smileでの間取りの話に移ります.
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